駿河台経済新聞

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卒論紹介『都道府県別平均寿命に影響を与える要因について』

都道府県別平均寿命に影響を与える要因についての研究

――都道府県別データを用いた回帰分析による平均寿命についての考察

大西 玲央

 

 本論文では都道府県別平均寿命に影響を与える要因について、都道府県別各種データを用いて分析した。

 

  1. はじめに

都道府県別の平均寿命表1-1を比較すると男性の場合、首位の長野県が80.88年なのに対し最下位の青森県は77.28年であり、その差は3.6年ある。女性の場合、首位の長野県が87.18年なのに対して最下位の青森県85.34年であり、その差は1.84年ある。このように都道府県別に平均寿命を比較してみると都道府県によってばらつきが存在していることがわかる。また同一都道府県の男女の順位を比較すると、例えば沖縄県の場合、男性の平均寿命は79.40年で30位なのに対して女性の平均寿命は87.02年で3位である。同一都道府県であるにも関わらず、男女で平均寿命の順位に差があるのだ。

では、このような都道府県間による平均寿命の差や同一都道府県における男女間の順位の差はなぜ発生するのだろうか。それを発生させる要因は何であろうか。この論文では都道府県平均寿命に影響を与える要因について、都道府県別の各種データを用いて統計的に分析する。そしてその要因を考察し、都道府県間による平均寿命格差や同一都道府県における男女間の順位格差を是正する方法について検討する。

1-1 都道府県別平均寿命

 

 

 

 

(単位:年)

順位

都道府県

平均寿命

都道府県

平均寿命

全 国

79.59

全 国

86.35

 

 

 

 

 

 1

長 野

80.88

長 野

87.18

 2

滋 賀

80.58

島 根

87.07

 3

福 井

80.47

沖 縄

87.02

 4

熊 本

80.29

熊 本

86.98

 5

神奈川

80.25

新 潟

86.96

 6

京 都

80.21

広 島

86.94

 7

奈 良

80.14

福 井

86.94

 8

大 分

80.06

岡 山

86.93

 9

山 形

79.97

大 分

86.91

10

静 岡

79.95

富 山

86.75

11

岐 阜

79.92

石 川

86.75

12

広 島

79.91

滋 賀

86.69

13

千 葉

79.88

山 梨

86.65

14

東 京

79.82

京 都

86.65

15

岡 山

79.77

神奈川

86.63

16

香 川

79.73

宮 崎

86.61

17

愛 知

79.71

奈 良

86.60

18

石 川

79.71

佐 賀

86.58

19

富 山

79.71

愛 媛

86.54

20

宮 崎

79.70

福 岡

86.48

21

三 重

79.68

高 知

86.47

22

宮 城

79.65

東 京

86.39

23

埼 玉

79.62

宮 城

86.39

24

兵 庫

79.59

香 川

86.34

25

山 梨

79.54

北海道

86.30

26

島 根

79.51

長 崎

86.30

27

新 潟

79.47

鹿児島

86.28

28

徳 島

79.44

山 形

86.28

29

群 馬

79.40

岐 阜

86.26

30

沖 縄

79.40

三 重

86.25

31

福 岡

79.30

愛 知

86.22

32

佐 賀

79.28

静 岡

86.22

33

鹿児島

79.21

徳 島

86.21

34

北海道

79.17

千 葉

86.20

35

愛 媛

79.13

兵 庫

86.14

36

茨 城

79.09

鳥 取

86.08

37

和歌山

79.07

山 口

86.07

38

栃 木

79.06

福 島

86.05

39

山 口

79.03

秋 田

85.93

40

鳥 取

79.01

大 阪

85.93

41

大 阪

78.99

群 馬

85.91

42

高 知

78.91

埼 玉

85.88

43

長 崎

78.88

岩 手

85.86

44

福 島

78.84

茨 城

85.83

45

岩 手

78.53

和歌山

85.69

46

秋 田

78.22

栃 木

85.66

47

青 森

77.28

青 森

85.34

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. データ

本論文で使用したデータは以下の通りです。平成22年の都道府県別の各種データを用いて分析を行いました。

 

・平均寿命(男性)

・平均寿命(女性)

・平均気温

・県内総生産(1人あたり)

・可住地面積1平方キロメートル当たり人口密度

・魚介類支出金額

・肉類支出金額

・乳卵類支出金額

・野菜・海藻(葉茎菜・根類)支出金額

・野菜・海藻(その他野菜)支出金額

・野菜・海藻(乾物・海藻)支出金額

・果物支出金額

・菓子類支出金額

・調理食品支出金額

・酒類支出金額

・保健医療支出金額

・米支出金額

・パン支出金額

・めん類支出金額

・油脂支出金額

・食用油支出金額

・マーガリン支出金額

・食塩支出金額

・しょうゆ支出金額

・みそ支出金額

・砂糖支出金額

・酢支出金額

・マヨネーズ支出金額

・茶類支出金額

・コーヒー・ココア支出金額

・果物・野菜ジュース支出金額

・炭酸飲料支出金額

乳酸菌飲料支出金額

乳飲料支出金額

・ミネラルウォーター支出金額

・日本そば・うどん(外食)支出金額

・中華そば(外食)支出金額

・すし(外食)支出金額

・中華食(外食)支出金額

・洋食(外食)支出金額

・ハンバーガー支出金額

 

  1. 分析

分析は2章の説明変数を用いて、被説明変数を平均寿命(男性)と平均寿命(女性)に分けてクロスセクション分析を行った。今回の分析では6つのテーマを設けて、平均寿命(男性)と平均寿命(女性)それぞれ分析を行った。まずは6つのテーマについて説明する。

テーマ名

属する説明変数

(3-1)野菜・果物

野菜・海藻(葉茎菜・根類)支出金額、野菜・海藻(その他野菜)支出金額、野菜・海藻(乾物・海藻)支出金額、果物支出金額

(3-2)主食

米支出金額、パン支出金額、めん類支出金額

(3-3)調味料

油脂支出金額、食用油支出金額、マーガリン支出金額、食塩支出金額、しょうゆ支出金額、みそ支出金額、砂糖支出金額、酢支出金額、マヨネーズ支出金額

(3-4)外食

日本そば・うどん(外食)支出金額、中華そば(外食)支出金額、すし(外食)支出金額、中華食(外食)支出金額、洋食(外食)支出金額、ハンバーガー支出金額

(3-5)飲料

酒類支出金額、茶類支出金額、コーヒー・ココア支出金額、果物・野菜ジュース支出金額、炭酸飲料支出金額、乳酸菌飲料支出金額、乳飲料支出金額、ミネラルウォーター支出金額

(3-6)その他食品

魚介類支出金額、肉類支出金額、乳卵類支出金額、菓子類支出金額、調理食品支出金額

 

次に分析方法について説明する。平均寿命(男性)と平均寿命(女性)を被説明変数とし、6つのテーマそれぞれについて男女別で分析を行った。またどのテーマにも属さない保健医療支出金額、平均気温、県内総生産(1人あたり)、可住地面積1平方キロメートル当たり人口密度の説明変数については、すべての分析においてコントロール用に回帰式に組み込むことにした。分析に手順としては以下の通りだ。

 

  • テーマに定めたすべての説明変数を用いて回帰分析
  • 1の回帰式の結果、P値が7以上の説明変数を除外して再度回帰分析を行う。
  • 2の回帰式の結果、P値が5以上の説明変数を除外して再度回帰分析を行う。
  • 3の回帰式の結果、P値が3以上の説明変数を除外して再度回帰分析を行う。

 

これらの手順により説明変数を除外していき、P値が0.3以下になったものの中で有意な結果が示されたものを次章に示す。

 

  1. 結果

 

4-1.男性の結果について

表6-1は男性の平均寿命に関する分析で、有意な結果が示された説明変数についてt値のプラスマイナス、有意水準についてまとめたものである。

 

表4-1

変数名

t値(+or-)

有意水準

変数名

t値(+or-)

有意水準

保健医療支出金額

+

**

炭酸飲料支出金額

-

**

平均気温

+

***

魚介類支出金額

-

**

コーヒー・ココア支出金額

+

***

肉類支出金額

+

**

パン支出金額

+

**

調理食品支出金額

+

**

しょうゆ支出金額

+

**

野菜・海藻(葉茎菜・根類)支出金額

+

*

マーガリン支出金額

+

**

マヨネーズ支出金額

-

*

油脂支出金額

-

**

果物・野菜ジュース支出金額

-

*

食用油支出金額

+

**

乳飲料支出金額

-

*

中華(外食)支出金額

+

**

 

 

 

 

4-2.女性の結果について

表4-2は女性の平均寿命に関する分析で、有意な結果が示された説明変数についてt値のプラスマイナス、有意水準についてまとめたものである。

 

表4-2

変数名

t値(+or-)

有意水準

変数名

t値(+or-)

有意水準

平均気温

+

*~***

果物・野菜ジュース支出金額

-

*

可住地面積1平方キロメートル当たり人口密度

-

*

乳酸飲料支出金額

-

*

コーヒー・ココア支出金額

+

*

めん類支出金額

-

**

魚介類支出金額

-

*

みそ支出金額

+

**

 

 

 

調理食品支出金額

+

**

 

 

 

 

  1. まとめ

男女ともに平均寿命に対してプラスの要因となったのが、平均気温、調理食品支出金額、コーヒー・ココア支出金額であった。男女とも平均気温が高いほど平均寿命が長い結果となった。また、調理食品支出金額に関しては栄養成分がパッケージに表示され、栄養分の摂取のコントロールが容易に出来るためか男女ともにプラスの要因となった。コーヒー・ココア支出金額も男女ともに平均寿命に対してプラスの要因であることが示されたのは非常に興味深い。

次に男女ともに平均寿命に対してマイナスの要因となったのが、魚介類支出金額と果物・野菜ジュース支出金額であった。果物・野菜ジュース支出金額に関しては、マイナスに働くとの結果が示されたことは予想外であった。

こんどは、男女の平均寿命に関する回帰分析結果についての相違点を見ていきたい。まず特筆すべき点としてあげられるのは保健医療支出金額である。男性の場合には6つのテーマすべてで平均寿命に対してプラスに働くという有意な結果が得られた。それに対して女性の場合には有意な結果は得られなかった。そして男性の場合、肉類支出金額が平均寿命に対してプラスの要因として働くことは興味深い。

 

 

 

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