駿河台経済新聞

神田駿河台から発信する経済・ビジネス・社会情報

卒論紹介『経済調査機関による実質GDP成長率予測の精度について』

「経済予測は当たらない」という説がある。2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた際、その時期のエコノミストによる経済予想は大きく外れる結果となり、世間を大いに賑わせた。

しかし、経済予測は政府の政策提言の基礎や企業運営における指針などに非常に重要な要素となっている。そのため、この研究では経済調査機関が発表する実質GDP成長率予測に焦点を当て、本当に予測は当たらないのかを調査するとともに、予測機関の予測の傾向を明らかにすることで、最新の経済予測の実態を探っていく。

記事にするにあたり全文を載せるわけにもいかないため、細かいところは省略し、要点のみを紹介していきます。ご了承ください。

 

 

【対象予測機関】

予測値については、日本経済研究センターが年初に発表する『日本経済研究センター会報』の「民間調査機関経済見通し」を参考にした。これは、年末に予測機関が発表した予測値を集めたもので、発表時点の次の年度の予測値が掲載されている。以下、1980年以降継続してデータが取れた17機関を対象とした。

 

<専門研究機関等>

・政府見通し

日本経済研究センター

・日経NEEDS予測

・国民経済研究会

・関西社会経済研究所

 

<生命保険・証券系>

朝日生命保険

ニッセイ基礎研究所

大和総研

野村証券金融経済研究所

・新光総合研究所

 

<銀行系>

日本総合研究所

住友信託銀行

三菱総合研究所

三菱UFJリサーチ&コンサルティング

みずほ総合研究所

三菱UFJ信託銀行

・大和銀総合研究所

 

*対象期間は1980年から2012年であるが、2003年以降予測値を発表しなくなった機関や、組織自体がなくなった機関もある。

 

 

【日本の経済予測精度】

まず経済予測とそのパフォーマンスについて振り返ってみる。過去の実質GDP成長率予測を振り返ってみると、大きく外れた年が多いことがわかる。予測機関17機関の予測値の最大値と最小値をとってみると、その間に実質値が入っていない場合も多い。どの予測機関も予測が的中しなかった場合である(図1)。また、誤差が大きかった年はどのような年であったか調べるため、実績値と予測機関の予測値平均との差を誤差とし、その絶対値が大きい順に並べた(表2)。

 

図1 予測機関のパフォーマンス(実質GDP成長率予測)

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表2 実質GDP成長率予測誤差ワースト10

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予測値の誤差の絶対値が最も大きかったのは2008年度で、予測機関平均の2.0%に対し、実質値はマイナス3.7%で、5.7%も予測が外れている。予測の最大値は野村証券金融経済研究所と大和総研の2.3%、最小値は住友信託銀行みずほ総合研究所などで1.9%であり、比較的どの機関も似たような予測値を発表していた。

 

次に誤差の絶対値が大きかったのは、1987年度のバブル期である。87年度の予測は、プラザ合意の影響による急激な円高進行の中で行われた。そのため予測機関平均の2.7%に対し、実質値は6.1%で、3.4%も予測が外れている。予測の最大値は政府見通しの3.5%、最小値は三菱総合研究所の1.8%であった。

 

 

【各予測機関の予測精度】

次は対象とした17機関の予測精度について見ていく。予測を評価する方法はさまざまなものが、今回は誤差を評価する指標として、平均平方誤差の平方根を用いる。これは、誤差の二乗和を平均し、平方根をとったものである。この値が小さいほど予測精度が良く、値が大きいほど精度が悪いということになる。

 

表3 実質GDP予測の平均平方誤差による予測精度比較

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【考察】

日本の経済予測の的中率はそれほど高いものではない。予測機関によってはたまたまある年では的中することもあるが、外すことがほとんどである。その中でも予測が大きく外れた時期の背景に、リーマンショックやバブル景気などが挙げられる。世界的な金融危機やバブルは予測に大きな影響を及ぼすようである。

 

しかし、このような経済危機に対して予測機関はいち早く気づくことはできないのだろうか。外国で起こった危機に対して日本は楽観的な態度を取り、その影響が伝わる速さや大きさを見誤ることが多いように感じる。内閣府が発表する景気基準日付を参考に予測が大きく外れた年度を見てみると、確かに景気の転換点において予測を大きく外した年度が当てはまることが多い。世界の経済状況を加味しつつ、景気の変動に敏感になることが予測を的中させるために重要なことであろう。

 

予測機関ごとのパフォーマンスを比べると、年代によっては大きく差が出るときはあるが、平均してならすとあまり大差はないように思える。また、予測の的中率が時系列的に上昇しているということはなさそうだ。

 

そもそも予測を当てようとしていないということも考えられる。予測値を発表することにより、景気をコントロールしようという思惑や努力目標として数値を少し上に予測しているということもあるだろう。紙面の都合上長くなってしまうため省略してしまったが、政府見通しに関して、そのような背景を持って強気な予測をする傾向があるような結果が得られた。

 

本稿では実質GDP成長率のみをピックアップして分析を行ったため、消費や設備投資、輸出入などGDPを構成する変数については考慮していない。予測項目別に分析を行うことにより、本稿とは違った結果が出ることはあるだろう。より詳細な結果出ることは間違いないので検証する必要があると思われる。

 

 

 

今回のように、経済予測について事後的な評価をすることは予測の精度を向上させるために必要なことである。しかし、単に実質GDP成長率が当たったかどうかで判断するのではなく、なぜはずれたのか、今後予測を的中させるにはどうすればいいかなど多角的な評価方法を考えるべきである。

 

経済予測は家計や企業、はたまた一国の道標となりうるものであるため、今後もこのような評価を続けていくことは重要である。

 

 

【参考文献・資料】

浅子和美・佐野尚史・長尾知幸(1989),「経済予測の評価」, 大蔵省財政金融研究所『フィナンシャル・レビュー』, 第13 号, pp10-33。

山澤成康・阿久津聡・倉品武文・杉山友規・高橋顕吾・西川琢也・村上直己(1998),「経済予測のパフォーマンスは満足できるものか」, JCER REVIEW, Vol.14。

浅子和美・山澤成康(2005), 「予測機関の予測形成様式」, 「経済研究」, Vol.56, No.3,July 2005, pp218-233。

山澤成康(2011),『新しい経済予測論』、日本評論社

日本経済研究センター,『日本経済研究センター会報』, 1980-2008 内1,2月号。

JCER 日本経済研究センターホームページ(https://www.jcer.or.jp/index.html

内閣府,「年次経済財政報告」,内閣府ホームページ(http://www.cao.go.jp/

 

 

なぜ経済予測は間違えるのか?---科学で問い直す経済学

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経済予測脳で人生が変わる!

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卒論紹介『貿易統計と景気の関係性について』

この論文では「実質輸出額」や「実質輸入額」といった貿易統計と景気の関係について述べていく。代表性による「実質輸出額が減少しているときは不況」といったイメージが必ずしも正しいわけではないということを周知させ国民の不必要な不安を取り除くべく、貿易統計と景気が常に連動するわけではないことについて分析し明らかにしていきたい。

また、代表性とは行動経済学の言葉で、ものごとを判断するときに代表的な事例に影響されて結論をだすことである。

 

【使用したデータ】

景気動向指数CIの一致指数(内閣府

実質輸出額、実質輸入額、実質貿易収支(日本銀行時系列データ)

全て1990年1月~2014年12月の月次データを使用している。

 

 

【拡大期・縮小期に分けての統計分析】

1990年3月~2012年10月までの月次データをそれぞれ拡大期、縮小期ごとにまとめ、CI、実質輸出額、実質輸入額の平均値、中央値、標準偏差を求めた。

 

拡大期・縮小期に分けた結果、拡大期ではCIも実質輸出額、実質輸入額も増加していて、縮小期ではCIも実質輸出額、実質輸入額も減少していることが分かった。この分析の結果、長い期間で見ると「輸出額が減少すると景気は悪い、もしくは悪くなる」という世間一般で考えられている認識はあながち間違いではないことが分かった。

 

 

景気循環における拡大期、縮小期ごとの分析】

次にそれぞれの景気循環における拡大期、縮小期のCI,実質輸出額,実質輸出額の変化率の平均値、中央値、標準偏差を調べた。

 

1990/3~93/9、2012/4~12/10の2期は縮小期でありながら実質輸出額の変化率が1を超えていることが分かった。この結果から景気が縮小しているときに必ずしも輸出額が減る傾向であるわけではないことが分かった。

そこで景気動向指数であるCIの値が悪くなり実質輸出額が増加している時期、CIの値が良くなって実質輸出額が減少している時期を具体的に調べ、分析していく。

 

【輸出額の増減が景気と連動しなかった期間の分析】

図1

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図1で赤く囲まれている期間が輸出額の増減が景気と連動しなかった期間である。

 

 ①プライム・ローン問題、輸出の増加(2007.7~2008.1)

期間中のCIの変化率の平均値は1未満、実質輸出額の平均値は1以上となっている。

この時期の輸出は緩やかに増加していた。地域別にみると、アジア向け輸出は一般機械、電気機器や化学製品が増加し全体として増加していた。アメリカ向け輸出は輸送用機器が増加している。EU向け輸出は一般機械、輸送用機器が増加し、全体として緩やかに増加 していた。

景気はアメリカのサブプライム・ローン問題の影響で悪化した。住宅価格のバブルは非合理的なバブルであったのであり、金融工学への過信もバブルの崩壊と同時に消失した。借り手の返済能力を超えたサブプライム・ローンに対しては、金利支払いや元本の返済に追われだした者は消費を削減せざるをえなくなった。自動車ローンなどの一般的な融資も縮小し、その結果、アメリカの実体経済は急速に冷え込むことになった。日本経済は「いざなぎ超え」と喧伝された戦後最長の好景気が2007年10月に天井を打ち、緩やかな景気後退期に入っていった。

 

 ②景気の良化、輸出の悪化 (2013.7~2013.10)

 期間中のCIの変化率の平均値は1以上、実質輸出額の変化率の平均値は1未満である。

この時期の輸出は弱含んでいた。地域別にみると、アジア向けの輸出はおおむね横ばいであった。アメリカ及びEU向けの輸出は横ばいとなっていた。一方、その他地域向けの輸出は弱含んでいるとみられていた。

2013年7-9月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)がマイナスに寄与したものの、民間最終消費支出、民間住宅、民間在庫品増加、政府最終消費支出、公的固定資本形成がプラスに寄与したことなどから前期比で0.5%増となった(4四半期連続のプラス)。

 以上からこの景気回復は輸出頼みの景気回復ではないことがわかる。景気を回復させるには輸出の増加が必要というのが世間のイメージだが、今回の景気回復は輸出が減少していたとしても景気回復が可能なことを示している。

 

【輸出依存度】

輸出が増加しても景気が悪化するケースや輸出が減少しても景気が回復するケースがあることが分かった。そこで世界で日本の輸出依存度はどれ程高いのか調べた。

 

表 世界の輸出依存度 国別ランキング (全208か国)【単位:%】

順位

国名

輸出依存度

1

香港

179.88

11

オランダ

66.00

41

韓国

43.87

50

ドイツ

38.70

110

中国

22.28

121

フランス

20.41

137

イギリス

16.48

144

日本

15.24

169

アメリカ

9.32

グローバルノート - 国際統計・国別統計専門サイトhttp://goo.gl/c5LbrL(2016.1.10閲覧)

 

上の表から日本の輸出依存度は15.24%で世界208か国の中で144位と、アメリカを除く他の先進国よりも輸出依存度が低いということが分かった。つまり景気回復に輸出の増加が必須という世間のイメージと異なり、輸出の増加が昨今の日本の景気に与える影響は少なくなってきているのである。

 

【実質輸入額と景気】

図2

 

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先ほどまでに昨今の日本において輸出額の増減は景気に影響を及ぼしにくいということを述べた。しかし、上の図2からは実質貿易収支の増減は景気に大きく影響を及ぼしているように考えることができる。

 そこで新たに「最近の日本の景気の良し悪しは実質輸入額によって決まるようになっている」という仮説を立て検証する。

 それぞれの期間の内閣府月次報告を参照すると、輸入額が増加する状況の期間、設備投資、個人消費が増加し景気が良くなった。また輸入額が減少する状況の期間、設備投資、個人投資ともに減少し景気が後退していることが分かった。

 よって「最近の日本の景気の良し悪しは実質輸入額の動向によって決まるようになっている」という仮説は正しいと考える。

 

【結論】

この論文では4つの事実を明らかにすることができた。

1つ目は日本における輸出額が増加しているときは景気が良くなるという世間のイメージは統計的に見るとあながち間違ってないように見えるということ。

2つ目は、1つ目のイメージ通りにいかない輸出額が増加しても景気回復しない期間がある上に日本の輸出依存度は他の先進国と比べても低く、輸出額の動向が最近の日本の景気に大きな影響を与えているとは言えないということ。

3つ目は「貿易赤字や実質貿易収支の減少は景気後退に繋がる」という世間のイメージは全く正しくないこと。むしろ貿易赤字や実質貿易収支が減少しているときに景気回復をしていることが頻繁にあること。

4つ目は最近の日本の景気の良し悪しは実質輸入額の動向によって決まるようになってきているということ。

 当初の目的であった「輸出額が減少しているときは景気が悪い」や「貿易赤字のときは景気が悪い」という世間のイメージを分析することで、これらのイメージは行動経済学における代表性によるものであり事実ではないということを示すことができた。この認識を広めることができれば国民が好景気なのにも関わらず不景気だと勘違いして消費を控え結果的に本当に不景気になるという自己成就予言を避けることができるだろう。

 

【参考文献】

浅子和美・篠原総一(2011)『入門・日本経済』有斐閣

山澤成康(2011),『新しい経済予測論』日本評論社

多田洋介(2011),『行動経済学入門』日本経済新聞出版社

三橋規宏・内田茂男・池田吉紀(2009),『ゼミナール日本経済入門 改訂版』日本経済新聞出版社

内閣府 年次経済財政報告(2001) http://goo.gl/xIAPgn  (2015年11月7日閲覧)

内閣府 年次経済財政報告(2008) http://goo.gl/wju83D(2016年1月10日閲覧)

内閣府 年次経済財政報告(2009) http://goo.gl/3GqA0o   (2015年11月8日閲覧)

内閣府 年次経済財政報告(2011) http://goo.gl/DrbqpV (2015年12月閲覧)

内閣府 年次経済財政報告(2012) http://goo.gl/2gH8st (2015年12月閲覧)

内閣府 年次経済財政報告(2013) http://goo.gl/u82fXt(2016年1月10日閲覧)

内閣府 月次経済報告(平成4年11月)http://goo.gl/IhVWt7(2015年12月閲覧)

内閣府 月次経済報告(平成5年5月)http://goo.gl/5tQSD4(2015年12月閲覧)

内閣府 月次経済報告(平成8年4月)http://goo.gl/zYYMOA(2015年12月閲覧)

内閣府 月次経済報告(平成10年6月)http://goo.gl/4ZixPA(2016年1月10日閲覧)

内閣府 月次経済報告(平成12年12月)http://goo.gl/csls6s(2016年1月10日閲覧)

内閣府 月次経済報告(平成19年12月)http://goo.gl/PwcwU0(2016年1月10日閲覧)

内閣府 月次経済報告(平成23年5月)http://goo.gl/HD6Z13(2015年12月閲覧)

内閣府 月次経済報告(平成24年8月)http://goo.gl/N5tCKy(2016年1月10日閲覧)

内閣府 月次経済報告(平成25年10月)http://goo.gl/JM07tC(2016年1月10日閲覧)

グローバルノート -国際統計・国別統計専門サイトhttp://goo.gl/c5LbrL(2016.1.10閲覧)

日本銀行(1998)「1997年度の金融および経済の動向」https://goo.gl/uSyebw(2016年1月10日閲覧)

 

 

 

行動経済学 経済は「感情」で動いている (光文社新書)

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卒論紹介『個人投資家のツイートデータを利用したセンチメント分析』

 飯塚です。このエントリーでは私が卒業論文で執筆した個人投資家のツイートデータを利用したセンチメント分析 ― 個人投資家の感情変化と日経平均株価日次データの関係に関する考察」を一部噛み砕いて紹介します。

——————————————————————

 

  1. はじめに

世の中の人々の抱えている考えや感情の分析といったものは、これまで取得することが非常に困難だった。理由は

・大量のデータを取り扱える分析手法が発達していなかった点

・分析元となるデータを大量に取得することが困難であった点

の大きく二点が挙げられる。

 前者の分析手法に関しては、近年大量のテキストデータを解析できるようになり、また、言葉そのものが持つ感情のポジティブ度合い、ネガティブ度合いを定量化することができるようにもなった。中でも、石島他(2015)、「日次データを用いた市場センチメント・インデックスの構築と株価説明力の分析」(http://sigfin.org/?plugin=attach&refer=SIG-FIN-011-06&openfile=SIG-FIN-011-06.pdf)では、日本経済新聞の記事に含まれるテキストデータをテキストマイニングし、市場センチメント・インデックス(記事テキストに含まれる感情や雰囲気)が、三日後の株価収益率を説明・予測しうることを発見した。

 これらの成果を参考に、本論文では、過去研究では触れられていない個人投資家自身の発信するテキストデータを大量に取得し、それらをテキストマイニングして感情の起伏を探った。また、その起伏と日経平均株価の日次データとを比較し、関係性を考察した。

 

  1. 分析対象・分析手法

 

分析対象となるデータは下記である。

  • データ収集元:Twitter (https://twitter.com/)
  • 対象ユーザー:個人投資家らしきTwitterアカウントのうち「フォロワー数5000人以上」「目視で確実に個人投資を行っていると確認できるアカウント」
  • 対象言語:日本語ツイートのみ
  • 対象期間:日経平均株価日次データとの比較時=2015年8月4日〜2015年11月30日

        曜日データとの比較時=2015年8月2日〜2015年11月30日

  • リツイート:含む
  • @ツイート:含む
  • 取得ツイート数:41,600ツイート(1アカウントあたりの取得限界数3200ツイート×13アカウント)

 

続いて実際の分析であるが、

  • テキストマイニングによりテキストデータに含まれる単語の出現頻度を算出
  • 各単語の感情数値をセンチメント辞書に基づきスコアリング
  • データセットの作成

という順序で実施した。各プロセスで使用したソフトウェア、辞書などは下記である。

Tweet取得:Twimemachine(http://www.twimemachine.com)

テキストマイニング(分かち書き):Tiny Text Miner Windows版(http://mtmr.jp/ttm/)

形態素解析エンジン:mecab-0.98 (http://mecab.googlecode.com/svn/trunk/mecab/doc/index.html)

・センチメント辞書:「単語感情極性対応表」 (http://www.lr.pi.titech.ac.jp/~takamura/pndic_ja.html)

 

  1. データセット

日経平均株価日次データ比較時のデータセット

データカテゴリ

データ名

算出式

日経平均株価

日経平均株価(終値)

日経平均株価

日経平均株価(始値)

日経平均株価

日経平均株価(高値)

日経平均株価

日経平均株価(安値)

日経平均株価

始値終値の差

(翌日始値) – (前日終値)

日経平均株価

高値と安値の差

(高値) – (同日安値)

投資家感情

投資家感情(絶対値)

投資家感情

投資家感情(相対値)

(感情数値) − (全感情データの平均値)

投資家感情

投資家感情(前日差)

(翌日感情数値) – (前日感情数値)

 

※サンプルツイート対象期間:2015/8/4〜2015/11/30

 

曜日ダミーデータ比較時のデータセット

データカテゴリ

データ名

算出方法

投資家感情

投資家感情(絶対値)

投資家感情

投資家感情(相対値)

投資家感情

投資家感情(前日差)

(翌日感情数値) – (前日感情数値)

曜日

月曜日ダミー変数

曜日

火曜日ダミー変数

曜日

水曜日ダミー変数

曜日

木曜日ダミー変数

曜日

金曜日ダミー変数

曜日

土曜日ダミー変数

 

※サンプルツイート対象期間:2015/8/2〜2015/11/30

 

  1. 重回帰分析の結果概要

本論文においては、下記の四種類の関係を探った。

  1. 投資家感情(絶対値)に対する日経平均株価の値動きの影響
  2. 投資家感情(絶対値)に対する前日の日経平均株価の影響
  3. 投資家感情(前日差)に対する曜日ダミー変数の影響
  4. 翌日始値と前日終値の差額に対する個人投資家の感情の影響

 

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  1. 投資家感情(絶対値)に対する日経平均株価の値動きの影響

10%有意水準において、株価の高値と安値の差は、個人投資家の感情へマイナスに働いていると言える。これは相場の変動に振り回され、不安や恐怖の感情を個人投資家たちが抱いているためであると考えられる。

 

 

f:id:SurugaD:20160307103527p:plain

  2.投資家感情(絶対値)に対する前日の日経平均株価の影響

10%有意水準において、前日株価の終値は、翌日の個人投資家感情へプラスに働いている。これは前日の終値個人投資家たちがチェックしており、それが上がり傾向であれば当然翌日の感情がポジティブに変わるためであると考えられる。

 

 

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 3.投資家感情(前日差)に対する曜日ダミー変数の影響

1%有意水準において、土曜日であることは個人投資家の感情の前日との差にプラスへ働いていると言える。仮説であるが、土曜日になると市場が閉じており、不安な感情を抱かなくて済むためであると考えることができる。

これまで日経平均株価個人投資家たちの感情に与える影響を分析してきたが、逆に個人投資家たちの感情の総和が日経平均株価に影響を与える可能性についても検証した。

 

f:id:SurugaD:20160307103831p:plain

 4.翌日始値と前日終値の差額に対する個人投資家の感情の影響

投資家の感情数値の前日差は、5%有意水準で、翌日始値と前日終値の差額へプラスに働いている。つまり、投資家の感情が前日から翌日にかけてプラスに推移すれば、翌日始値が前日終値より大きくなるということであり、その逆も然りである。これは個人投資家たちの感情の総和が日経平均株価へ影響を与えうることを示しているが、見せかけの回帰である可能性もあり、個人投資家の感情の動きが確実に先行して影響を与えていると断言するには材料が不足しているとも言える。

——————————————————————

 

以上です。この結論をより強固なものにするには、取得するツイートの対象アカウントをより広くし、ツイートのサンプルを増やすことや、ツイートの対象期間を広げるということが考えられます。これを本論文の課題として、論文の紹介を終わります。

 

  1. 参考

  • 日次データを用いた市場センチメント・インデックスの構築 と株価説明力の分析

石島博、數見拓朗、前田章

(http://sigfin.org/?plugin=attach&refer=SIG-FIN-011-06&openfile=SIG-FIN-011-06.pdf)

 

 

社会調査のための計量テキスト分析―内容分析の継承と発展を目指して

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数式を使わないデータマイニング入門 隠れた法則を発見する (光文社新書)

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卒論紹介『国内の大規模イベントと土地価格の関係についての研究』

国内の大規模イベントと土地価格の関係についての研究

田村賢史

 

本論文では、国内で行われる大規模なイベントで地価はどのように変動するのかについて検討した。対象は長野オリンピック愛知万博、横浜華博、つくば万博、日韓W杯前後5年の地価情報である。

 

地価情報・使用するデータ

今回行う調査は、

 内容 日本で行われる大規模なイベントで地価はどのように変動するのか。

 対象 長野オリンピック、愛知・横浜・つくば万博、日韓W杯前後5年の

地価情報からビックイベントと地価の関係について調べる。

                                                                                     

調査では公示価格を使用する。データは標準地・基準地検索システム、国土交通省地価公示都道府県地価調査に載せてあるものを利用した。

 

調査方法

長野オリンピック愛知万博、つくば科学万博、横浜華博、日韓W杯開催会場の5つを調査対象とする。

  • 長野オリンピック   ・・・平成3(1991)年開催決定、平成10(1998)年開催
  • 愛知万博       ・・・平成9(1997)年開催決定、平成17(2005)年開催
  • つくば科学万博    ・・・昭和56(1981)年開催決定、昭和60(1985)年開催
  • 横浜華博       ・・・昭和59(1984)年開催決定、昭和64(1989)年開催
  • 日韓W杯開催会場   ・・・平成8(1996)年開催決定、平成14(2002)年開催

 

対象都市は長野市とする。期間は、平成5~15年のデータを使用する。比較都市は、長野県松本市新潟県長岡市を使用する。

対象都市は長久手市とする。期間は、平成12~22年のデータを使用する。比較都市は岐阜県多治見市と静岡県沼津市のデータを使用する。

  • つくば科学万博

茨城県つくば市を対象都市とする。期間は、昭和55年~平成2年のデータを利用する。比較都市は茨城県土浦市水戸市である。

  • 横浜華博

 神奈川県横浜市を対象都市とする。期間は、昭和59年~平成6年のデータを利用する。比較都市は神奈川県川崎市と埼玉県さいたま市である。

  • 日韓W杯

日韓W杯は、平成14(2002)年に、日本と韓国それぞれ10か所、計20か所で試合が行われた。この中で観客動員数が多かった上位3つである埼玉スタジアム横浜国際総合競技場長居スタジアムがある都市(横浜市さいたま市大阪市東住吉区)をデータとして使用する。

 

集計の仕方は、上記①~⑤の各地点の合計したものに、全地点、住宅地、商業地、工業地ごとの平均とその上昇率(前年比)を出す。相乗平均を出すので正の数にする必要があるため、すべての上昇率にそれぞれ1を足す。

 

対象地と比較値の比較結果

長野市の地価の変動率は、オリンピックが開催される前3年、5年の平均ともに比較年よりも下落率が小幅であった。また全国平均と比べても下落率の落ちは少なかった。

平成3年は、全国的には、バブル崩壊の年であり、また、その数年後に阪神淡路大震災が発生したことから、オリンピックが開催される2年前までは二ケタの割合で地価が下落している。比較都市の松本市も比較的似たような変動率を示している。しかし、長岡市は、平成5年まで地価は上昇していることから、必ずしもすべての市町村が全国平均と同様の動きをしているとは限らない。 

 

平成12年は、全国的には、バブル崩壊による平成不況の10年が一段落したが、地価の下落には歯止めがかかっていなかった。開催地である長久手市も、開催前3,5年前は地価が下落している。比較地域の多治見市と沼津市の下落幅は全国平均、長久手市と比べても大きくなっている。開催後は長久手市の地価は上昇しているが、全国平均と比べても大きな違いは見られない。

 

  • つくば科学万博

対象期間の後半は昭和61年から平成3年にかけてバブル景気であったため、全国的に地価価格は大幅に上昇している。その中でも昭和62年の地価上昇率は58%に達するなど、土地の高騰が際立っている。住宅地、商業地、工業地を比較すると、住宅地の変動率が大きくなっている

つくば市を見ると、万博開催前の3年間の地価の上昇率が全国平均、比較都市よりも高く、20%を超えている。しかし、開催2年後の昭和62年には、比較地域を含めた対象期間の中で唯一地価が下落している。この年は、先に触れたようにバブル最盛期であるため、比較都市も地価は上昇している。よって、万博開催前に地価が上昇した分、その反動で地価下落につながったと考えることもできる。一方で、万博以外に目を向けると、昭和62年11月30日に筑波郡矢田部村、大穂町、豊里町、新治群桜村の3町1村が新設合併して、当時の筑波町から人口11万人を超えるつくば市が誕生している。地価が全国平均以上に上昇した理由としては後者も考えることができる。

 

  • 横浜華博

開催前3、5年は全地点、川崎、さいたまの上昇率はほぼ同じである。開催後3,5年も横浜と全国平均ほぼ変わらず、上昇から下落に反転するタイミングもさほど変わりはない。住宅地、商業地、工業地も同様の動きである。全国平均の61~62年にかけて最も上昇率が高いのは先に触れたように、バブル景気の影響とみられるが、各都市を見ると、最も上昇幅が大きいのが3地点とも昭和63年で全国平均と比べて1年遅くなっており、全国平均よりも大幅に上昇している。  

 

  • 日韓W杯

横浜市さいたま市東住吉区ともに全国平均と比較しても大きな違いはみられなかった。開催年のみ全国平均が若干上昇しているが、対象地域は同程度の割合で下落している。住宅地、商業地、工業地ともに全地点で地価は下落していて、W杯開催前、開催後で目立った違いはみられなかった。

 

 対象地全体の開催前5年、前3年、開催年、開催後3年、5年の上昇率の変動の平均

全体平均(対象地)

全地点

住宅地

商業地

工業地

前5年

0.0212

0.0318

−0.0073

0.0267

前3年

0.0418

0.0449

0.0212

0.0275

開催年

−0.0339

−0.0297

−0.0459

−0.0404

後3年

−0.0420

−0.1186

−0.0486

−0.0744

後5年

−0.0229

−0.0629

−0.0460

−0.0727

 

比較地全体の開催前5年、前3年、開催年、開催後3年、5年の上昇率の変動の平均

全体平均(比較値)

全地点

住宅地

商業地

工業地

前5年

0.0489

0.0676

0.0379

0.0564

前3年

0.0774

0.0910

0.0695

0.0360

開催年

−0.0235

−0.0246

−0.0178

−0.0069

後3年

−0.0089

−0.0050

−0.0122

0.0340

後5年

−0.0202

−0.0109

−0.0293

0.0014

 

対象地全体と比較値全体の比較

最後に対象地全体と比較値全体の平均について見ていく。全地点を比較すると、イベント開催前3、5年ともに比較値地価の方が上昇率は大きかった。イベント開催後も3年は比較値の方が下落率は低くなっていた。住宅地、商業地、工業地についても同様の結果となった。工業地は比較値地価が上昇しているのに対し、イベント開催地は下落が続いたままであった。

 

まとめ・考察

5つのケースについてデータを比較してきたが、対象地域と比較地域との間に大きな違いがみられると思われるケースはなかった。長野オリンピックのみ若干の上昇率の違いがみられたが、比較地域と比較すると際立って上昇しているといえるものではなかった。また、①~⑤のデータ全体を比較しても、むしろ対象地域のほうが上昇率は大きく、下落率は小さいという結果であった。このことから国内の大規模なイベントと地価の相違は見られないといえる。個別のデータでは触れなかったが、地価の上昇率に変動を与える要因として、一つに市町村合併があげられる。市町村合併もしくは隣接する地域を吸収している地域はその次の年度に地価が大きく上昇していることがいくつかの地域で見られた。そこに住む人々の生活に直接の影響を与えるような事象が、土地価格に大きく影響を与えるのではないかと考えられる。

 

 

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卒論紹介『都道府県別平均寿命に影響を与える要因について』

都道府県別平均寿命に影響を与える要因についての研究

――都道府県別データを用いた回帰分析による平均寿命についての考察

大西 玲央

 

 本論文では都道府県別平均寿命に影響を与える要因について、都道府県別各種データを用いて分析した。

 

  1. はじめに

都道府県別の平均寿命表1-1を比較すると男性の場合、首位の長野県が80.88年なのに対し最下位の青森県は77.28年であり、その差は3.6年ある。女性の場合、首位の長野県が87.18年なのに対して最下位の青森県85.34年であり、その差は1.84年ある。このように都道府県別に平均寿命を比較してみると都道府県によってばらつきが存在していることがわかる。また同一都道府県の男女の順位を比較すると、例えば沖縄県の場合、男性の平均寿命は79.40年で30位なのに対して女性の平均寿命は87.02年で3位である。同一都道府県であるにも関わらず、男女で平均寿命の順位に差があるのだ。

では、このような都道府県間による平均寿命の差や同一都道府県における男女間の順位の差はなぜ発生するのだろうか。それを発生させる要因は何であろうか。この論文では都道府県平均寿命に影響を与える要因について、都道府県別の各種データを用いて統計的に分析する。そしてその要因を考察し、都道府県間による平均寿命格差や同一都道府県における男女間の順位格差を是正する方法について検討する。

1-1 都道府県別平均寿命

 

 

 

 

(単位:年)

順位

都道府県

平均寿命

都道府県

平均寿命

全 国

79.59

全 国

86.35

 

 

 

 

 

 1

長 野

80.88

長 野

87.18

 2

滋 賀

80.58

島 根

87.07

 3

福 井

80.47

沖 縄

87.02

 4

熊 本

80.29

熊 本

86.98

 5

神奈川

80.25

新 潟

86.96

 6

京 都

80.21

広 島

86.94

 7

奈 良

80.14

福 井

86.94

 8

大 分

80.06

岡 山

86.93

 9

山 形

79.97

大 分

86.91

10

静 岡

79.95

富 山

86.75

11

岐 阜

79.92

石 川

86.75

12

広 島

79.91

滋 賀

86.69

13

千 葉

79.88

山 梨

86.65

14

東 京

79.82

京 都

86.65

15

岡 山

79.77

神奈川

86.63

16

香 川

79.73

宮 崎

86.61

17

愛 知

79.71

奈 良

86.60

18

石 川

79.71

佐 賀

86.58

19

富 山

79.71

愛 媛

86.54

20

宮 崎

79.70

福 岡

86.48

21

三 重

79.68

高 知

86.47

22

宮 城

79.65

東 京

86.39

23

埼 玉

79.62

宮 城

86.39

24

兵 庫

79.59

香 川

86.34

25

山 梨

79.54

北海道

86.30

26

島 根

79.51

長 崎

86.30

27

新 潟

79.47

鹿児島

86.28

28

徳 島

79.44

山 形

86.28

29

群 馬

79.40

岐 阜

86.26

30

沖 縄

79.40

三 重

86.25

31

福 岡

79.30

愛 知

86.22

32

佐 賀

79.28

静 岡

86.22

33

鹿児島

79.21

徳 島

86.21

34

北海道

79.17

千 葉

86.20

35

愛 媛

79.13

兵 庫

86.14

36

茨 城

79.09

鳥 取

86.08

37

和歌山

79.07

山 口

86.07

38

栃 木

79.06

福 島

86.05

39

山 口

79.03

秋 田

85.93

40

鳥 取

79.01

大 阪

85.93

41

大 阪

78.99

群 馬

85.91

42

高 知

78.91

埼 玉

85.88

43

長 崎

78.88

岩 手

85.86

44

福 島

78.84

茨 城

85.83

45

岩 手

78.53

和歌山

85.69

46

秋 田

78.22

栃 木

85.66

47

青 森

77.28

青 森

85.34

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. データ

本論文で使用したデータは以下の通りです。平成22年の都道府県別の各種データを用いて分析を行いました。

 

・平均寿命(男性)

・平均寿命(女性)

・平均気温

・県内総生産(1人あたり)

・可住地面積1平方キロメートル当たり人口密度

・魚介類支出金額

・肉類支出金額

・乳卵類支出金額

・野菜・海藻(葉茎菜・根類)支出金額

・野菜・海藻(その他野菜)支出金額

・野菜・海藻(乾物・海藻)支出金額

・果物支出金額

・菓子類支出金額

・調理食品支出金額

・酒類支出金額

・保健医療支出金額

・米支出金額

・パン支出金額

・めん類支出金額

・油脂支出金額

・食用油支出金額

・マーガリン支出金額

・食塩支出金額

・しょうゆ支出金額

・みそ支出金額

・砂糖支出金額

・酢支出金額

・マヨネーズ支出金額

・茶類支出金額

・コーヒー・ココア支出金額

・果物・野菜ジュース支出金額

・炭酸飲料支出金額

乳酸菌飲料支出金額

乳飲料支出金額

・ミネラルウォーター支出金額

・日本そば・うどん(外食)支出金額

・中華そば(外食)支出金額

・すし(外食)支出金額

・中華食(外食)支出金額

・洋食(外食)支出金額

・ハンバーガー支出金額

 

  1. 分析

分析は2章の説明変数を用いて、被説明変数を平均寿命(男性)と平均寿命(女性)に分けてクロスセクション分析を行った。今回の分析では6つのテーマを設けて、平均寿命(男性)と平均寿命(女性)それぞれ分析を行った。まずは6つのテーマについて説明する。

テーマ名

属する説明変数

(3-1)野菜・果物

野菜・海藻(葉茎菜・根類)支出金額、野菜・海藻(その他野菜)支出金額、野菜・海藻(乾物・海藻)支出金額、果物支出金額

(3-2)主食

米支出金額、パン支出金額、めん類支出金額

(3-3)調味料

油脂支出金額、食用油支出金額、マーガリン支出金額、食塩支出金額、しょうゆ支出金額、みそ支出金額、砂糖支出金額、酢支出金額、マヨネーズ支出金額

(3-4)外食

日本そば・うどん(外食)支出金額、中華そば(外食)支出金額、すし(外食)支出金額、中華食(外食)支出金額、洋食(外食)支出金額、ハンバーガー支出金額

(3-5)飲料

酒類支出金額、茶類支出金額、コーヒー・ココア支出金額、果物・野菜ジュース支出金額、炭酸飲料支出金額、乳酸菌飲料支出金額、乳飲料支出金額、ミネラルウォーター支出金額

(3-6)その他食品

魚介類支出金額、肉類支出金額、乳卵類支出金額、菓子類支出金額、調理食品支出金額

 

次に分析方法について説明する。平均寿命(男性)と平均寿命(女性)を被説明変数とし、6つのテーマそれぞれについて男女別で分析を行った。またどのテーマにも属さない保健医療支出金額、平均気温、県内総生産(1人あたり)、可住地面積1平方キロメートル当たり人口密度の説明変数については、すべての分析においてコントロール用に回帰式に組み込むことにした。分析に手順としては以下の通りだ。

 

  • テーマに定めたすべての説明変数を用いて回帰分析
  • 1の回帰式の結果、P値が7以上の説明変数を除外して再度回帰分析を行う。
  • 2の回帰式の結果、P値が5以上の説明変数を除外して再度回帰分析を行う。
  • 3の回帰式の結果、P値が3以上の説明変数を除外して再度回帰分析を行う。

 

これらの手順により説明変数を除外していき、P値が0.3以下になったものの中で有意な結果が示されたものを次章に示す。

 

  1. 結果

 

4-1.男性の結果について

表6-1は男性の平均寿命に関する分析で、有意な結果が示された説明変数についてt値のプラスマイナス、有意水準についてまとめたものである。

 

表4-1

変数名

t値(+or-)

有意水準

変数名

t値(+or-)

有意水準

保健医療支出金額

+

**

炭酸飲料支出金額

-

**

平均気温

+

***

魚介類支出金額

-

**

コーヒー・ココア支出金額

+

***

肉類支出金額

+

**

パン支出金額

+

**

調理食品支出金額

+

**

しょうゆ支出金額

+

**

野菜・海藻(葉茎菜・根類)支出金額

+

*

マーガリン支出金額

+

**

マヨネーズ支出金額

-

*

油脂支出金額

-

**

果物・野菜ジュース支出金額

-

*

食用油支出金額

+

**

乳飲料支出金額

-

*

中華(外食)支出金額

+

**

 

 

 

 

4-2.女性の結果について

表4-2は女性の平均寿命に関する分析で、有意な結果が示された説明変数についてt値のプラスマイナス、有意水準についてまとめたものである。

 

表4-2

変数名

t値(+or-)

有意水準

変数名

t値(+or-)

有意水準

平均気温

+

*~***

果物・野菜ジュース支出金額

-

*

可住地面積1平方キロメートル当たり人口密度

-

*

乳酸飲料支出金額

-

*

コーヒー・ココア支出金額

+

*

めん類支出金額

-

**

魚介類支出金額

-

*

みそ支出金額

+

**

 

 

 

調理食品支出金額

+

**

 

 

 

 

  1. まとめ

男女ともに平均寿命に対してプラスの要因となったのが、平均気温、調理食品支出金額、コーヒー・ココア支出金額であった。男女とも平均気温が高いほど平均寿命が長い結果となった。また、調理食品支出金額に関しては栄養成分がパッケージに表示され、栄養分の摂取のコントロールが容易に出来るためか男女ともにプラスの要因となった。コーヒー・ココア支出金額も男女ともに平均寿命に対してプラスの要因であることが示されたのは非常に興味深い。

次に男女ともに平均寿命に対してマイナスの要因となったのが、魚介類支出金額と果物・野菜ジュース支出金額であった。果物・野菜ジュース支出金額に関しては、マイナスに働くとの結果が示されたことは予想外であった。

こんどは、男女の平均寿命に関する回帰分析結果についての相違点を見ていきたい。まず特筆すべき点としてあげられるのは保健医療支出金額である。男性の場合には6つのテーマすべてで平均寿命に対してプラスに働くという有意な結果が得られた。それに対して女性の場合には有意な結果は得られなかった。そして男性の場合、肉類支出金額が平均寿命に対してプラスの要因として働くことは興味深い。

 

 

 

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