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駿河台経済新聞

神田駿河台から発信する経済・ビジネス・社会情報

卒論紹介:日本の株価に影響を与える経済要素は何か?

こんばんは。
初登場、ぐろちゃんです。

今回は、卒業論文で研究した、日本の株価と経済指標の関係を紹介します。記事にするのであまり細かいところまでは述べられませんがご了承ください。


何をしたか

論文執筆にあたってデータ分析を行いました。データ分析については様々な本が出ていますので、もし分析をしてみたいという方は以下の本などを参考にしてみてください。

 

多変量解析がわかる (ファーストブック)

多変量解析がわかる (ファーストブック)

 


今回の研究では、回帰分析を使って、どの経済要素が株価に強く影響を与えるのか調べました。分析で使った経済データは以下の通りです。

 

説明変数

景気動向指数、先行系列から
・最終需要財在庫率指数 ・鉱工業生産財在庫率指数
・新規求人数 ・実質機械受注
・新設住宅着工床面積 ・消費者態度指数
・長短金利差 ・投資環境指数
・中小企業売上げ見通しD.I.

国際競争力指標として
・交易条件指数 ・名目実効為替レート

海外の株価指数
・ダウ平均株価 ・FTSE100種総合株価指数(イギリスの主要な株価指数
※ドイツ株価指数 DAX ※上海総合指数
※香港ハンセン株価指数

 

被説明変数

日経平均株価(225種)
東証株価指数

対象期間は1986年~2005年として、それぞれ月次の時系列データを使用しています・・・が、※のついた3つについては昔のデータが十分に集まらなかったため1991年以降のデータを使いました。

時系列データを使うとなったときに、単位根や見せかけの回帰といった問題が発生します。単位根とはデータの推移についての問題で、単位根である変数同士で回帰分析を行うと、実際には関係が無いのに分析結果に関係があるように出てしまう、というのが見せかけの回帰です。詳しくは以下の本など、時系列分析に関する本を見ていただければと思います。

 

経済・ファイナンスデータの計量時系列分析 (統計ライブラリー)

経済・ファイナンスデータの計量時系列分析 (統計ライブラリー)

 


と、いうことでデータを少し加工する必要があります。今回は、データの前月比を取る方法を採用しました(他にも方法はあったりしますがそれは後述)。

データが揃ったところで回帰分析をします。変数の決定には変数減少法を使いました。


分析の結果(一部)

変数の都合で分析期間が86年からと91年からの2つ、被説明変数が2つ、と分析は全部で4回となりました。そのうちの2つをご紹介します。
分析結果には、変数減少法で残った説明変数とそのt値(その変数が影響することの確からしさ)を紹介します。

まず、日経平均株価を被説明変数にして、1991年~2005年で全ての説明変数を使った場合。

説明変数 t値
長短金利差 1.914
実質機械受注 2.149
FTSE 100種総合株価指数 2.525

最適変数として残った説明変数は3つだけでした。


続けて、東証株価指数を被説明変数にして、1986年~2005年で※を省いた場合。

 説明変数 t値
鉱工業生産財在庫率指数 2.286
長短金利差 2.550
中小企業売上げ見通しD.I. 1.944
新設住宅着工床面積 1.931
実質機械受注 2.001
投資環境指数 3.694
FTSE 100種総合株価指数 3.651

先程よりも変数は残って、最適変数には7つ選ばれました。

分析を行った中で、選ばれた変数はすべて係数がプラスになりました。


考察

上のような分析を行った結果、4回の分析のうち3回以上で最適変数となったのは以下の5つでした。

・実質機械受注 ・新設住宅着工床面積
・長短金利差 ・中小企業売上げ見通しD.I.
・FTSE100種総合株価指数


このうち、FTSE100種を除いた4つについては経済学でもしばしば見られるようなものです。

実質機械受注とは、設備投資用の機械を機械メーカーが受注した額を表します。設備投資と言いますと、経済学ではジュグラーが提唱した10年周期の経済循環「ジュグラーの波」の主因とみられています。経済や株価について、設備投資がかかわり深いことは既に言われているようです。

これは新設住宅着工床面積でも同じようなことが考えられます。クズネッツが提唱した20年周期の経済循環「クズネッツの波」は建設投資に起因するものと考えられています。ジュグラーの波、クズネッツの波は聞いたことある方も多いかと思われます。

さて、次に長短金利差ですが、これは国の経済の安定性や健全性を表していると言えます。日本の長短金利差は長期国債(10年)の金利とTIBOR(銀行間の取引での金利、3か月)の差で表されます。この差が(プラスに)大きいほど将来的な経済の安定を予想していると考えられます。逆にマイナスになると、経済が危ない状態だと言えるでしょう。
ただ、最近ですと世界的に利下げが多く行われているだけに、少し長短金利差の見方を変える必要もありそうです。

続けて、中小企業売上げ見通しD.I.です。これは中小企業経営者が、これからの売上げについてどう思っているか、つまり期待を示したものです。期待については経済学で色々と言われていますけれども、影響力は大きいと考えていいのでしょう。

最後に、FTSE100種総合株価指数です。この影響力が大きいのは予想外でした。イギリスの株価がどういった点で日本の株価に影響しているのかは深くは分かりませんでした。しかしながら、戦後の西側諸国として、アメリカとつながっていた国同士ということで、日本とイギリスで経済のつながりがあるとみられます。

といったところで、変数についての考察でした。


私自身、時系列データの分析は今回が初めてでしたので新しく勉強する点は多くありました。この分析で、更に精度を上げていくには、データをより細かく見るということもありますが、データの加工方法といった技術的なこともあります(VARとか共和分とか、詳しい説明は省きます)。そこは後輩がやってくれることを期待したいと思います(笑)


ということで、私の研究の紹介でした。