駿河台経済新聞

神田駿河台から発信する経済・ビジネス・社会情報

卒論紹介『都道府県別平均寿命に影響を与える要因について』

都道府県別平均寿命に影響を与える要因についての研究

――都道府県別データを用いた回帰分析による平均寿命についての考察

大西 玲央

 

 本論文では都道府県別平均寿命に影響を与える要因について、都道府県別各種データを用いて分析した。

 

  1. はじめに

都道府県別の平均寿命表1-1を比較すると男性の場合、首位の長野県が80.88年なのに対し最下位の青森県は77.28年であり、その差は3.6年ある。女性の場合、首位の長野県が87.18年なのに対して最下位の青森県85.34年であり、その差は1.84年ある。このように都道府県別に平均寿命を比較してみると都道府県によってばらつきが存在していることがわかる。また同一都道府県の男女の順位を比較すると、例えば沖縄県の場合、男性の平均寿命は79.40年で30位なのに対して女性の平均寿命は87.02年で3位である。同一都道府県であるにも関わらず、男女で平均寿命の順位に差があるのだ。

では、このような都道府県間による平均寿命の差や同一都道府県における男女間の順位の差はなぜ発生するのだろうか。それを発生させる要因は何であろうか。この論文では都道府県平均寿命に影響を与える要因について、都道府県別の各種データを用いて統計的に分析する。そしてその要因を考察し、都道府県間による平均寿命格差や同一都道府県における男女間の順位格差を是正する方法について検討する。

1-1 都道府県別平均寿命

 

 

 

 

(単位:年)

順位

都道府県

平均寿命

都道府県

平均寿命

全 国

79.59

全 国

86.35

 

 

 

 

 

 1

長 野

80.88

長 野

87.18

 2

滋 賀

80.58

島 根

87.07

 3

福 井

80.47

沖 縄

87.02

 4

熊 本

80.29

熊 本

86.98

 5

神奈川

80.25

新 潟

86.96

 6

京 都

80.21

広 島

86.94

 7

奈 良

80.14

福 井

86.94

 8

大 分

80.06

岡 山

86.93

 9

山 形

79.97

大 分

86.91

10

静 岡

79.95

富 山

86.75

11

岐 阜

79.92

石 川

86.75

12

広 島

79.91

滋 賀

86.69

13

千 葉

79.88

山 梨

86.65

14

東 京

79.82

京 都

86.65

15

岡 山

79.77

神奈川

86.63

16

香 川

79.73

宮 崎

86.61

17

愛 知

79.71

奈 良

86.60

18

石 川

79.71

佐 賀

86.58

19

富 山

79.71

愛 媛

86.54

20

宮 崎

79.70

福 岡

86.48

21

三 重

79.68

高 知

86.47

22

宮 城

79.65

東 京

86.39

23

埼 玉

79.62

宮 城

86.39

24

兵 庫

79.59

香 川

86.34

25

山 梨

79.54

北海道

86.30

26

島 根

79.51

長 崎

86.30

27

新 潟

79.47

鹿児島

86.28

28

徳 島

79.44

山 形

86.28

29

群 馬

79.40

岐 阜

86.26

30

沖 縄

79.40

三 重

86.25

31

福 岡

79.30

愛 知

86.22

32

佐 賀

79.28

静 岡

86.22

33

鹿児島

79.21

徳 島

86.21

34

北海道

79.17

千 葉

86.20

35

愛 媛

79.13

兵 庫

86.14

36

茨 城

79.09

鳥 取

86.08

37

和歌山

79.07

山 口

86.07

38

栃 木

79.06

福 島

86.05

39

山 口

79.03

秋 田

85.93

40

鳥 取

79.01

大 阪

85.93

41

大 阪

78.99

群 馬

85.91

42

高 知

78.91

埼 玉

85.88

43

長 崎

78.88

岩 手

85.86

44

福 島

78.84

茨 城

85.83

45

岩 手

78.53

和歌山

85.69

46

秋 田

78.22

栃 木

85.66

47

青 森

77.28

青 森

85.34

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. データ

本論文で使用したデータは以下の通りです。平成22年の都道府県別の各種データを用いて分析を行いました。

 

・平均寿命(男性)

・平均寿命(女性)

・平均気温

・県内総生産(1人あたり)

・可住地面積1平方キロメートル当たり人口密度

・魚介類支出金額

・肉類支出金額

・乳卵類支出金額

・野菜・海藻(葉茎菜・根類)支出金額

・野菜・海藻(その他野菜)支出金額

・野菜・海藻(乾物・海藻)支出金額

・果物支出金額

・菓子類支出金額

・調理食品支出金額

・酒類支出金額

・保健医療支出金額

・米支出金額

・パン支出金額

・めん類支出金額

・油脂支出金額

・食用油支出金額

・マーガリン支出金額

・食塩支出金額

・しょうゆ支出金額

・みそ支出金額

・砂糖支出金額

・酢支出金額

・マヨネーズ支出金額

・茶類支出金額

・コーヒー・ココア支出金額

・果物・野菜ジュース支出金額

・炭酸飲料支出金額

乳酸菌飲料支出金額

乳飲料支出金額

・ミネラルウォーター支出金額

・日本そば・うどん(外食)支出金額

・中華そば(外食)支出金額

・すし(外食)支出金額

・中華食(外食)支出金額

・洋食(外食)支出金額

・ハンバーガー支出金額

 

  1. 分析

分析は2章の説明変数を用いて、被説明変数を平均寿命(男性)と平均寿命(女性)に分けてクロスセクション分析を行った。今回の分析では6つのテーマを設けて、平均寿命(男性)と平均寿命(女性)それぞれ分析を行った。まずは6つのテーマについて説明する。

テーマ名

属する説明変数

(3-1)野菜・果物

野菜・海藻(葉茎菜・根類)支出金額、野菜・海藻(その他野菜)支出金額、野菜・海藻(乾物・海藻)支出金額、果物支出金額

(3-2)主食

米支出金額、パン支出金額、めん類支出金額

(3-3)調味料

油脂支出金額、食用油支出金額、マーガリン支出金額、食塩支出金額、しょうゆ支出金額、みそ支出金額、砂糖支出金額、酢支出金額、マヨネーズ支出金額

(3-4)外食

日本そば・うどん(外食)支出金額、中華そば(外食)支出金額、すし(外食)支出金額、中華食(外食)支出金額、洋食(外食)支出金額、ハンバーガー支出金額

(3-5)飲料

酒類支出金額、茶類支出金額、コーヒー・ココア支出金額、果物・野菜ジュース支出金額、炭酸飲料支出金額、乳酸菌飲料支出金額、乳飲料支出金額、ミネラルウォーター支出金額

(3-6)その他食品

魚介類支出金額、肉類支出金額、乳卵類支出金額、菓子類支出金額、調理食品支出金額

 

次に分析方法について説明する。平均寿命(男性)と平均寿命(女性)を被説明変数とし、6つのテーマそれぞれについて男女別で分析を行った。またどのテーマにも属さない保健医療支出金額、平均気温、県内総生産(1人あたり)、可住地面積1平方キロメートル当たり人口密度の説明変数については、すべての分析においてコントロール用に回帰式に組み込むことにした。分析に手順としては以下の通りだ。

 

  • テーマに定めたすべての説明変数を用いて回帰分析
  • 1の回帰式の結果、P値が7以上の説明変数を除外して再度回帰分析を行う。
  • 2の回帰式の結果、P値が5以上の説明変数を除外して再度回帰分析を行う。
  • 3の回帰式の結果、P値が3以上の説明変数を除外して再度回帰分析を行う。

 

これらの手順により説明変数を除外していき、P値が0.3以下になったものの中で有意な結果が示されたものを次章に示す。

 

  1. 結果

 

4-1.男性の結果について

表6-1は男性の平均寿命に関する分析で、有意な結果が示された説明変数についてt値のプラスマイナス、有意水準についてまとめたものである。

 

表4-1

変数名

t値(+or-)

有意水準

変数名

t値(+or-)

有意水準

保健医療支出金額

+

**

炭酸飲料支出金額

-

**

平均気温

+

***

魚介類支出金額

-

**

コーヒー・ココア支出金額

+

***

肉類支出金額

+

**

パン支出金額

+

**

調理食品支出金額

+

**

しょうゆ支出金額

+

**

野菜・海藻(葉茎菜・根類)支出金額

+

*

マーガリン支出金額

+

**

マヨネーズ支出金額

-

*

油脂支出金額

-

**

果物・野菜ジュース支出金額

-

*

食用油支出金額

+

**

乳飲料支出金額

-

*

中華(外食)支出金額

+

**

 

 

 

 

4-2.女性の結果について

表4-2は女性の平均寿命に関する分析で、有意な結果が示された説明変数についてt値のプラスマイナス、有意水準についてまとめたものである。

 

表4-2

変数名

t値(+or-)

有意水準

変数名

t値(+or-)

有意水準

平均気温

+

*~***

果物・野菜ジュース支出金額

-

*

可住地面積1平方キロメートル当たり人口密度

-

*

乳酸飲料支出金額

-

*

コーヒー・ココア支出金額

+

*

めん類支出金額

-

**

魚介類支出金額

-

*

みそ支出金額

+

**

 

 

 

調理食品支出金額

+

**

 

 

 

 

  1. まとめ

男女ともに平均寿命に対してプラスの要因となったのが、平均気温、調理食品支出金額、コーヒー・ココア支出金額であった。男女とも平均気温が高いほど平均寿命が長い結果となった。また、調理食品支出金額に関しては栄養成分がパッケージに表示され、栄養分の摂取のコントロールが容易に出来るためか男女ともにプラスの要因となった。コーヒー・ココア支出金額も男女ともに平均寿命に対してプラスの要因であることが示されたのは非常に興味深い。

次に男女ともに平均寿命に対してマイナスの要因となったのが、魚介類支出金額と果物・野菜ジュース支出金額であった。果物・野菜ジュース支出金額に関しては、マイナスに働くとの結果が示されたことは予想外であった。

こんどは、男女の平均寿命に関する回帰分析結果についての相違点を見ていきたい。まず特筆すべき点としてあげられるのは保健医療支出金額である。男性の場合には6つのテーマすべてで平均寿命に対してプラスに働くという有意な結果が得られた。それに対して女性の場合には有意な結果は得られなかった。そして男性の場合、肉類支出金額が平均寿命に対してプラスの要因として働くことは興味深い。

 

 

 

長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい (健康プレミアムシリーズ)

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卒論紹介『都道府県別平均通勤時間が出生率に与える影響について 』

こんにちは、いしつかです。今回は卒業論文のテーマとして、都道府県別の平均通勤時間と出生率についての分析と考察を紹介したいと思います。

 

1. はじめに

 日本の出生率は近年減少傾向にあります。出生率の低下は少子化の進行に直接的に影響し、社会経済に問題を発生させます。人口構造の変化によって生じる少子高齢化社会は、若年労働力人口の減少、一人あたり社会保障負担の増大といった、経済的負担を増大させ、その経済的負担が婚姻率・出生率の低下に繋がり、更に少子化の進行に拍車をかけているのです。

 

図1:日本の出生数・出生率の推移

f:id:SurugaD:20160223195558p:plain

 

 

図2は、2010年の都道府県ごとの平均通勤時間のヒストグラムです。年齢層が高くなると、同性間の差は収束していきますが、男女間では通勤時間に大きな差が生じることがわかります。男女年齢層別の通勤時間に着目してみると、年をとり、結婚や出産を機に住居を移し、通勤時間を変化させていることも考えられます。

 

今回の分析では、一概に都道府県全人口の通勤時間を変数に用いるのではなく、出生率に関わる15~24歳、25~34歳、35~44歳の男女と、計6つの層に分け、男女年齢層別の比較を行いました。

 

図2:2010年の都道府県ごとの平均通勤時間のヒストグラム(上段男性、下段女性、左から15~24歳、25~34歳、35~44歳)

f:id:SurugaD:20160223195615p:plain

 

 

2. データ

使用データの一覧以下の通りです。2000年、2005年、2010年の都道府県別のデータを使用、これらの年に該当するデータがない場合は、得られたデータのうち最も年の近いデータを使用しています。加えて今回の分析ではダミー変数として、東京ダミーと沖縄ダミーを用いています。

 

合計特殊出生率

・普通出生率

・夫の平均初婚年齢

・妻の平均初婚年齢

・15~24歳男性平均通勤時間

・25~34歳男性平均通勤時間

・35~44歳男性平均通勤時間

・15~24歳女性平均通勤時間

・25~34歳女性平均通勤時間

・35~44歳女性平均通勤時間

・婚姻率

・人口密度

・単独世帯割合

第三次産業就業者の割合

・昼夜間人口比率

・普通離婚率

・乳児死亡率

・幼稚園数

・小学校数

保育所

・一人当たり県民所得

・産科産婦人科医数

・15歳以上正規雇用率(男女別)

・待機児童数

・刑法犯認知件数

・育児休暇取得率(男女別)

 

 

3. 分析と考察

平均通勤時間6パターンと、設定した5つの回帰式を、P値が0.8を超える説明変数を除いて再度分析、P値が0.6を超えるもの・・・と繰り返し、最終的にP値が0.2を下回ったところで分析をやめ、約80通りの分析を行いました。今回は以下の2つの回帰分析についての結果と、一番赤池情報量基準(AIC)の値の低い式の結果を紹介します。

 

3-1. 合計特殊出生率を被説明変数とした回帰分析

 

3-2. 夫・妻の平均初婚年齢を被説明変数とした回帰分析

 

 

3-1. 合計特殊出生率を被説明変数とした回帰分析

 

分析の結果、15~24歳女性、25~34歳男性、35~44歳男性の平均通勤時間は合計特殊出生率に優位に負の影響を与えるという結果が得られました。

 

最も有意な結果が得られたのは、25~34歳男性の平均通勤時間でした。この年齢層は平均初婚年齢に近い層であるため、出生率に大きく関わる層ともいえ、彼らの通勤時間の長さが、全体の出生率の低下に関与していると考えることができます。

 

その他の変数については、15歳以上正規雇用率、幼稚園数、保育所数、産科産婦人科医数は、合計特殊出生率に正の影響を与え、第三次産業就業者の割合、一人当たり県民所得は負の影響を与えるという結果となりました。

 

表1: 25~34歳男性平均通勤時間を説明変数に用いた時の分析結果

変数名

係数

t値

P値

25~34歳男性平均通勤時間

-0.231

-3.02

0.00

15歳以上男性正規雇用

0.294

3.99

0.00

第三次産業就業者の割合

-0.328

-4.83

0.00

対人口産科産婦人科医数

0.140

2.73

0.00

一人当たり県民所得

-0.372

-5.06

0.00

対人口幼稚園数

0.130

2.73

0.00

対人口保育所

0.139

2.23

0.02

沖縄ダミー

2.958

8.07

0.00

R2: 0.74, AIC: 1.64

 

3-2. 夫・妻の平均初婚年齢を被説明変数とした回帰分析

 

平均初婚年齢は出生率に影響を与えることから、設定した説明変数が平均初婚年齢を高め、その結果出生率の低下の要因になっていることも考えられます。そのため、夫・妻の平均初婚年齢を被説明変数として回帰分析を行いました。

 

分析の結果、35~44歳女性の平均通勤時間のみ、妻の平均初婚年齢に正の影響を与えるという結果となりました。しかし、妻の平均初婚年齢の都道府県平均が27.6歳(2005年)であることを考慮すると、この変数が初婚年齢の上昇に影響を与えているということは考え難いです。平均初婚年齢が低いほど、平均通勤時間も短くなるという、逆の因果も考慮できる、つまりは同年代の未婚の女性が多い地域ほど平均通勤時間も長くなる傾向にあるということも考えられます。したがって、女性の平均通勤時間長さが平均初婚年齢を高めている原因となっているとは、必ずしも言い切れないことに注意が必要です。

 

その他の変数については、一人当たり県民所得、単独世帯割合は、夫・妻の平均初婚年齢に正の影響を与え、15歳以上正規雇用率、小学校数、普通離婚率、幼稚園数は負の影響を与えるという結果となりました。

 

表2: 15~24歳男性平均通勤時間を説明変数に用いた時の分析結果(平均通勤時間のP値が0.2を超えていたため除外されてしまっています)

変数名

係数

t値

P値

15歳以上男性正規雇用

-0.271

-3.31

0.00

第三次産業就業者の割合

-0.373

-3.54

0.00

対人口小学校数

-0.177

-2.09

0.03

昼夜人口比率

-0.669

-7.80

0.00

普通離婚率

-0.327

-4.82

0.00

一人当たり県民所得

0.383

3.42

0.00

単独世帯割合

0.463

4.38

0.00

人口密度

0.365

4.57

0.00

対人口幼稚園数

-0.273

-5.50

0.00

東京ダミー

2.395

3.67

0.00

沖縄ダミー

2.145

5.29

0.00

R2: 0.78, AIC: 1.50

 

         

 

 

4. まとめ

結論として、男女ごとに対象の年齢層は異なるが、平均通勤時間は出生率に与える負の影響を与えていると考えられます。現在、少子化や晩婚化を解決させる様々な政策が、国や地域で実施されていますが、出生率を回復させるための政策の一つとして、平均通勤時間の長い地域を改善する政策を行うことで、日本の少子化の進行の流れを変化させる要因としてはたらくのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

参考文献

戸田淳仁(2007)、『出生率の実証分析-景気や家族政策との関係を中心に』

小崎敏男(2010)、『若者を取り巻く労働市場の変化と出生率の変化』

みずほ情報総研株式会社(2005)『地域経済及び社会保障における地域差についての統計的分析』 

多田智和・杉下昌弘(2010)『全国及び47都道府県毎の生活時間相互の関係の傾向分析(参考比較:少子化指標、経済指標)』

伊達雄高・清水谷諭(2004)『日本の出生率低下の要因分析:実証研究のサーベイと政策的含意の検討』

宇南山卓(2011)『結婚・出産と就業の両立可能性と保育所の整備』

 

データ出典

総務省統計局『国勢調査

総務省統計局『社会生活基本調査』

厚生労働省『人口動態調査』

文部科学省『学校基本調査』

厚生労働省社会福祉施設等調査』

内閣府『県民経済計算』

厚生労働省『医師・歯科医師・薬剤師調査』

総務省統計局『就業構造基本調査』

総務省統計局『社会生活統計指標』

警察庁『犯罪統計』

 

 

少子社会日本―もうひとつの格差のゆくえ (岩波新書)

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保育園義務教育化

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卒論紹介『群馬県のふるさと納税における特典制度の影響と成功要因分析』

こんにちは。今回のブログでは、私(杉木)の卒業論文を紹介します。

テーマは、群馬県ふるさと納税における特典制度の影響と成功要因分析」です。

 

1.はじめに

そもそもふるさと納税とはどんな制度なのでしょうか?

これは、「生まれ育ったふるさとに貢献できる」、「自分の意思で応援したい自治体を選ぶことができる」納税制度として2008年度に創設された制度です。この制度が作られた背景には、都会一極集中と地方過疎という今の日本社会の現状があります。多くの人が地方で生まれながらも進学や就職を機に都会へ移り、その場所で納税を行う結果、都会の税収は増える一方で、ふるさとの税収は減ってしまいます。この地方と都市の税収格差という課題を解決するためにふるさと納税が創設されました。

 

2.全国の成功事例

次に、寄付金額が全国ランキング上位の、以下3市町村の成功例を調査しました。

この3自治体の特典の内容を見てみるとどれも中身が充実しています。そして3自治体ともに、特典を導入してから飛躍的に寄付件数・金額が伸びていました。ここから、ふるさと納税制度の寄付件数・金額の増加は特典制度の充実と相関関係があるのではないかという仮説が立ちました。

 

3.データ詳細

仮説を立証するための回帰分析で扱うデータについて説明していきます。データは以下の8種類です。

【表1 データ詳細】

変数名

単位

出典

ふるさと納税の寄付件数

(Donation Number)

ふるさとチョイスホームページ

 

ふるさと納税の寄付金額

(Amount of Money)

ふるさとチョイスホームページ

 

③人口(Population)

群馬県統計情報提供システムホームページ

④特典制度の有無

(Thanks Gift)

1:あり

0:なし

ふるさとチョイスホームページ

⑤クレジット決済の有無

(Credit Pay)

1:あり

0:なし

ふるさとチョイスホームページ

⑥特典が豪華

(High-return)

1:極めて豪華

0:それ以外

ふるさとチョイスホームページ

⑦特典が豪華でない

(Low-return)

1:豪華でない

0:それ以外

ふるさとチョイスホームページ

⑧特典制度導入経過年数(Passed years)

各市町村役場に問い合わせ

 

特筆すべきデータと

 

して、⑥⑦の特典の豪華さについて説明します。

【図1 各市町村の納税特典の豪華さ】

 f:id:SurugaD:20160223194452p:plain

 

4.回帰分析結果

次に、3のデータを回帰分析した結果を述べます。

①寄付件数

寄付件数と最も強い相関を示したのは、「特典の豪華さ」です。「特典が豪華でない」ことと「特典導入経過年数」は寄付件数と相関関係はないことが読み取れます。また、人口が多いとかえって寄付件数は少なくなるという結果も出ました。これは、寄付者は繁華街よりも田舎を選ぶ傾向があるのではと考えられるでしょう。

 

②寄付金額

寄付金額の増減は、「特典の有無」よりも「クレジット決済の有無」と「特典の豪華さ」と強い相関関係あるということが読み取れました。「クレジット決済」は、寄付者側が、寄付金額が多くなるほど手続きがより簡単なクレジット決済ができる市町村を選ぶ、または寄付金額が多い自治体ほどふるさと納税に力を入れているだろうと考えられます。

 

回帰分析の結果によって、①②ともに特典の豪華さが最も重要な要素と分かりました。

 

5.考察

では、特典の豪華さとは一体どんな要素が含まれるのでしょうか?群馬県内の市町村の特典例を見ていきます。

 

<寄付伸び率の高い県内3市町村の例>

榛東村(しんとうむら)

伊香保温泉の旅館金券

②だるま等の県の名産である工芸品

③果物(りんご、イチゴ)

④肉(手作りハム、上州牛サーロイン)

⑤その他コシヒカリ米や白子海苔セット等の特産品 

 

中之条町(なかのじょうまち)

四万温泉で使える半額相当の感謝券

特産品のセット

100万円以上の高額寄付者に対して、「1日町長就任権」特典 

 

草津(くさつ)

  • 半額相当の感謝券(飲食店・宿泊施設)
  • 草津温泉入浴券
  • スキー場リフト券

 

<寄付の少ない県内3市町村の例>

  • 高山村

5,000円以上の寄付で以下の2つの特典を贈呈している。

村内の店で利用できる「お礼券(金券)」

高山村の農産物等(お米・野菜・果物・加工品・他)の特産品 

 

一万円以上寄付した人には、以下の2つの特典がもらえます。特典の種類は一種類のみ。

  • 邑楽町産のブランド米5キログラムと、地場産品詰め合わせセットをプレゼント
  • 町の広報誌を1年間無料でお届け

 

うどんの詰め合わせ、または、またはうどんと日本酒の詰め合わせ

上記の2種類で、寄付金額は5000円から特典贈呈

 

これらの特典を見てみると、特典の豪華さは「還元率の高さ」と「利用上の制限がない」という共通点があると考えられます。

 

6.課題とまとめ

 4の分析結果から、寄付件数・金額増加のためには、特典の有無よりも「中身の豪華さ」が重要ということが分かりました。そして特典の豪華さとは、「還元率の高さ」と「利用上の制限がない」ということが明らかになりました。

 特典制度の運用については課題も多々ありますが、ふるさと納税の今後の発展のために、群馬県や全国の自治体でより戦略的に活用されるべきでしょう。

 

<参考資料>

総務省(2015),「よくわかる!ふるさと納税」,総務省ふるさと納税ポータルサイト(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/080430_2_kojin.html)

 <参考文献>

・黒田成彦(2015)『平戸市はなぜ、ふるさと納税で日本一になれたのか?』(KADOKAWA)

 

平戸市はなぜ、ふるさと納税で日本一になれたのか?

平戸市はなぜ、ふるさと納税で日本一になれたのか?

 

 

・宝島社(2014)『ふるさと納税完全ランキング』(宝島社)

 

ふるさと納税 完全ランキング2016 (TJMOOK)

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増田寛也(2014)『地方消滅ー東京一極集中が招く人工急減』(中公新書

 

 

卒論紹介『電子マネー利用者の金銭感覚についての分析』

こんにちは、4年の上田です。今回は私の卒業論文電子マネー利用者の金銭感覚についての分析―アンケート調査によるデータに基づく電子マネー利用者の傾向の考察」について紹介したいと思います。

 

はじめに

今日では貨幣での決済の他に電子マネーでの決済が多く見られる。電子マネーが普及してきていることは明らかであり、電子マネーが今後も多くの人に利用されていくであろうと考えられる。私自身も電子マネーを頻繁に利用するが、電子マネーを使用しているときはお金を使っているという感覚が低下しているということに気づいた。言い換えると、電子マネーを使用する際には現金を使用しているときに比べて金銭感覚が変化しているのではないかと考えた。

 

そこで、新しい決済方法である電子マネー決済が消費者の金銭感覚にどう変化を与えているのか、電子マネー利用者にはどのような特徴があるのかを明らかにしたい。それを明らかにしたうえでこれからさらに普及するであろう電子マネーの使用にあたっての留意点やこれからの電子マネーについて考察していく。

 

電子マネーについて

電子マネーの種類は大きく二つに分けられる。一つがストアバリュー型 、もう一つがアクセス型である。前者は取引ごとに決済情報のやりとりを必要としない電子マネーである。一方後者は預金通貨がより一層流動的になった形態である。

 

さらに、ストアバリュー型の電子マネーは二つに分類される。一つ目はプリペイド型の電子マネープリペイド型とは前払い式という意味である。使用する前に電子マネーICカードにあらかじめチャージすることによって使用できるというものである。二つ目にポストペイ型の電子マネーである。ポストペイ型 とは後払い式という意味で、使用した金額を後日支払うというものである。こちらの電子マネーは決済の際に署名を必要としないことを除くとクレジットカードとほぼ同じ仕組みになり、消費行動と支払いに時間差がある。私の卒論では消費行動と支払いに時間差のないプリペイド型の電子マネーのみを対象にして研究を行う。

 

プリペイド型の電子マネーは主に5種類ある。交通系ICカードEdy、auWALLET、nanacoWAONである。以下の表では交通系のICカードSuicaPASMOに限定し計5種類がある。発行枚数は6種類合計で約22,023万枚にも及び、加盟店舗数も6種類でのべ約90万店 となる。また、各社は電子マネーをより多くの人に利用してもらえるようにポイント還元やオートチャージ機能などのサービスを提供している。

 

ここ数年のデータを通して電子マネーについては以下のグラフと表をご覧ください。

 

決済金額と決済金額の推移のグラフ

f:id:SurugaD:20160223192251p:plain

 

決済件数と発行枚数

 

決済件数

(百万件)

決済金額

(億円)

一件当たりの決済金額(円)

発行枚数

(万枚)

2008

1053

7581

720

9885

2009

1394(+32.3)

11223(+48.0)

805

12426

2010

1915(+37.4)

16363(+45.8)

854

14647

2011

2237(+16.8)

19643(+20.0)

878

16975

2012

2720(+21.6)

24671(+25.6)

907

19469

2013

3294(+21.1)

31355(+27.1)

952

22181

2014

4040(+22.6)

40140(+28.0)

994

25534

括弧内は前年比(%)

 

 

 

分析概要

研究方法はアンケート調査を用いる。大学生の男女415人を対象に行った。アンケートの内容は以下の通りである。

 

①           アルバイトによる収入

②           住まい

③           仕送りやお小遣いでもらっている金額(収入)

④           学校にいるときの昼食の平均使用額

⑤           高いと思う飲み会代の金額

⑥           目的地への電車移動について

⑦           家計簿をつけているか

⑧           電子マネープリペイド型)を使用したことがあるか

⑨           使用したことがある電子マネーの種類

⑩           電子マネーをどこで使用したことあるか

⑪           電子マネーで購入したもの

⑫           電子マネーの平均使用額電子マネーの一回の使用最大額

⑬           電子マネーの一回の使用最大額

⑭           電子マネーを使う理由

⑮           電子マネーにチャージされている金額を把握しているか

 

実際に使用したアンケート用紙を以下に掲載する。

f:id:SurugaD:20160223192342p:plain

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アンケートは

(ⅰ)①~③の収入について問う項目

(ⅱ)④~⑦,⑮の金銭感覚を問う項目

(ⅲ)⑧~⑪.⑭の電子マネーの使用される場所や使用される理由

(ⅳ)⑫~⑬の電子マネーの使用状況についての項目

で構成している。

⑫⑬を被説明変数として分析する。

 

分析方法はクロスセクション分析を用いる。収集したアンケート結果を元に各項目をダミー変数に変換する。具代的な数字の選択肢はその中央値をダミー変数として取った。具体的な数字以外の選択肢は選択肢ごとにダミー変数0or1に変換した。なお、選択肢が二択の設問についてはひとつの選択肢についてダミー変数0or1に変換した。また、設問⑤のアンケートで多くの人が選択肢「3000円以上」を選択したことからこの設問について“飲み会3500円ダミー”をいうものを設け、設問⑤で「3500円以上」「4000円以上」「4500円以上」「5000円以上」を選択したらダミー変数1、「3000円以上」を選んだら0として新たにダミー変数を作成した。

 

上記のダミー変数に変換したデータを元に⑫の電子マネー平均使用額と⑬の電子マネー最大使用額について回帰分析し、各項がどの項目と相関関係があるのかを明らかにしていく。なお、回帰分析の際は(ⅲ)についてはカットして分析を行った。

 

有意水準の値が高い順にカットして最終的に有意水準0.1以下のものだけを残すという方法ととった。

 

分析結果

⑫の電子マネー使用平均額についての回帰分析について

分析の結果、平均昼食使用額とチャージ額把握の項目が優位に働いた。

 

このことからわかるのは日頃、昼食にお金を使いがちな人、電子マネーの残高を把握していない人が電子マネーの平均使用額が多いということである。

 

私の仮設では収入(アルバイト収入や仕送り、小遣い)と電子マネー使用平均額が相関すると考えていたが、分析の結果、アルバイト収入とお小遣いの項目はともに優位水準が約30%に項目になり、相関関係は希薄であると考えられる。

 

昼食の平均額とチャージ金額を把握していないとい項目の次に優位水準が低かったのが家計簿をつけているか否かという項目であった。家計簿をつけていない人、日頃の昼食から多くお金を出している人、電子マネーの残高を把握しないで使用している人などお金に関してマメではない人が多く電子マネーを使っているという結果が出てきた。このような分析結果から電子マネー平均使用額はその人の豊かさではなく性格に依存して変化していることが考えられる。金銭感覚を問う項目で「電車で目的地に向かうとき、10分早いが150円多くかかるor10分遅いが150円安い」というものを用意したが、優位には働かなかった。

 

電子マネー最大使用額の回帰分析結果について

電子マネーの最大使用額は昼食平均使用額、飲み会代、飲み会3500円ダミー、チャージ額把握していないの四つの項目との相関がみられるという結果になった。本項でも収入に依存せず、使用者の性格や普段の消費行動に依存することが分かった。

 

考察

金銭感覚とは収入による変化よりも先にその人の性格、お金への考え方の違いから影響を受ける部分が多いと考えられる。普段から浪費しがちな人は電子マネーでも多くの金額を使用している。電子マネーを使用しているから金銭感覚が鈍くなる、お金を使っている感覚が薄れるというのではなく、元々お金を使いがちな人は貨幣が形を変えても使ってしまうという結論になるだろう。この卒論では対象を大学生のみにしたため、社会人の電子マネー使用や金銭感覚については収入の相関大きくなる可能性もあるが、やはり金銭感覚は性格に依存するところが多いだろうと思う。

 

 

電子マネー革命─キャッシュレス社会の現実と希望 (講談社現代新書)

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仮想通貨革命---ビットコインは始まりにすぎない

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卒論紹介『若年労働者と早期離職率の関係性について』

こんにちは、山内です。今回は、私の卒業論文のテーマである「若年労働者と早期離職率の関係性について」を紹介したいと思います。

 

1.はじめに

現在、若年労働者の早期離職率が社会問題になっています。早期離職率は年々減少傾向にあるものの、H24年3月卒業者において卒業3年後の離職率が中学卒で65.3%、高校卒で40.0%、大学卒で32.3%にも上るという結果が出ています。

 

図1:H24年3月卒業者における卒業3年後の離職率

f:id:SurugaD:20160222205924p:plain

このような状態が続くと、単に個人の能力が成長しないということだけでなく、結果として企業の成長性の妨げにもなってしまいます。この分析では、若年労働者と早期離職率の関係性を調査することで、早期離職率を低下させる為の糸口を探っていきたいと思います。

 

2.データについて

今回の分析では、産業別と都道府県別に高卒と大卒・大学院卒のデータを比較します。産業別では、入職者数、早期離職人数、早期離職率、有効求人数を使用します。有効求人数は1〜12月の12ヶ月分を平均した値を使用しています。また、産業別の分類は以下の39業種です。

 

表1:産業別分類

鉱業,採石業,砂利採取業

情報通信機械器具製造業

建設業

輸送用機械器具製造業

食料品,飲料・たばこ・飼料製造業

その他の製造業,なめし革・同製品・毛皮製造業

繊維工業

電気・ガス・熱供給・水道業

木材・木製品製造業

情報通信業

家具・装備品製造業

運輸業,郵便業

パルプ・紙・紙加工品製造業

卸売業

印刷・同関連業

小売業

化学工業,石油製品・石炭製品製造業

金融業,保険業

プラスチック製品製造業

不動産業,物品賃貸業

ゴム製品製造業

学術研究,専門・技術サービス業

窯業・土石製品製造業

宿泊業,飲食サービス業

鉄鋼業

娯楽業

非鉄金属製造業

教育,学習支援業

金属製品製造業

医療業

はん用機械器具製造業

社会保険社会福祉・介護事業

生産用機械器具製造業

複合サービス事業

業務用機械器具製造業

自動車整備業,機械等修理業

電子部品・デバイス・電子回路製造業

その他の事業サービス業

電気機械器具製造業

 

全39業種

 

都道府県別では、入職者数、早期離職人数、早期離職率、有効求人倍率都道府県ごとの人口、人口密度(総面積1㎢当たり)、人口密度(可住地面積1㎢当たり)を使用します。有効求人倍率は1〜12月の12ヶ月分を平均した値を使用しています。

データはそれぞれ、2010年〜2013年の4年間のもので、政府統計の総合窓口e-Statの雇用動向調査や、職業安定業務統計等を使用しています。

 

3.産業別早期離職率についての分析

 産業別早期離職率についての分析方法は、散布図による比較を用います。

 

図2:早期離職率と有効求人数の散布図大卒・大学院卒

 f:id:SurugaD:20160222210018p:plain

図2は大学・大学院卒の早期離職率と有効求人数の散布図です。特に法則は見られず、相関は無さそうです。高卒のデータも同じような結果となりました。

相関が見られなかった理由としては、業種ごとの特色が強いということが考えられます。例えば、金融業,保険業や医療業は、資格が必要な業種であり、多くの人が転職等をしないということを視野に入れて就職をしていることが多いのではないかと思います。対して、宿泊業,飲食サービス業や娯楽業は、業務内容を他社や別の業種でも応用できる場合が多く、より良い労働条件があればそちらへ流れてしまうことがあるのではないでしょうか。

 

4.都道府県別早期離職率についての分析

 都道府県別早期離職率についての分析方法は、回帰分析のパネルデータ分析を用い、高卒と大卒・大学院卒、そして両方を合わせたデータをそれぞれ分けて分析していきます。

 今回の分析で設定した説明変数は以下の6つです。

 

  1. 大卒・大学院卒ダミー
  2. 入職者数
  3. 有効求人倍率
  4. 人口
  5. 人口密度(総面積1㎢当たり)
  6. 人口密度(可住地面積1㎢当たり)

 

 この早期離職率とこれらの説明変数を用い、大卒・大学院卒と高卒では3通りずつ、両方を合わせたものは4通りの回帰分析を行いました。

 結果は有効求人倍率有意、それ以外は有意でないとなり、有効求人倍率は今回設定した6つの変数の中で、唯一全てのデータで早期離職率に影響を与えるということが分かりました。この事から、有効求人倍率は大卒・大学院卒、高卒に関わらず早期離職率と深い関係があるという事が分かります。その係数はおよそ-0.7であり、早期離職率に対して負の影響を与えています。また、今回の分析で1番驚くべき事は、大卒・大学院卒ダミーが早期離職率に対して影響を与えないということです。大卒・大学院卒ダミーとは、大卒・大学院卒であるかそうでないか(ここでは高卒)ということが早期離職率に影響を与えるかを調べる為に設置した変数です。つまり、大卒・大学院卒や高卒であるということで早期離職率には関係が無いという事です。

 

5.まとめ

これまでの分析の結果を受け、大卒・大学院卒や高卒ということで早期離職率に影響を与えないという事がわかりました。この原因として、大学や大学院、高校の学生生活中に勤労観が身に付いていないという事が考えられます。つまり、就職するにあたっての企業側が求めている知識や能力が不足しており、そこが企業とのミスマッチとなっているのではないかと思います。そのミスマッチを解消する為には、学生生活のうちにより様々な社会経験をすることが大切なのではないでしょうか。もちろん学生自身が自らの就職について考え、行動する事も大切ですが、学校や企業のサポートがある事によって学生がより就職した後のイメージを持つ事が出来るのではないかと思います。若年労働者の早期離職率を下げる為には、学生のうちから社会に触れる事が出来るような環境を作る事が大切になってくるのではないかと考えられます。

 

参考文献

厚生労働省,「新規学卒者の離職状況」厚生労働省若年者雇用関連データ

(http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/12.html:2015年12月31日閲覧)

厚生労働省(2013),「新規学卒者の離職状況(平成22年3月卒業者の状況)」労働市場分析レポート

(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/roudou_report/dl/20131029_03.pdf:2015年12月31日閲覧)

三重県(2008),「三重県の若年者の早期離職防止に関する企業調査」就職とキャリアの教育学

(http://ir.nul.nagoya-u.ac.jp/jspui/bitstream/2237/16852/1/v18-6.pdf:2015年12月31日閲覧)

・熊澤光正(2007),「女性新入社員と経験者の職場意識と疲労感に関する研究」日本経営工学会論文誌

(http://ci.nii.ac.jp/els/110007521735.pdf?id=ART0009351699&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1452483629&cp=:2015年12月31日閲覧)

・山口憲二(2005),「キャリア教育と若年者雇用問題」新島学園短期大学紀要

(http://ci.nii.ac.jp/els/110004621808.pdf?id=ART0007331936&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1452483872&cp=:2015年12月31日閲覧)

・e-Stat,「雇用動向調査」最新結果一覧

(http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/GL08020101.do?_toGL08020101_&tstatCode=000001012468&requestSender=dsearch:2015年12月31日閲覧)

・e-Stat,「職業安定業務統計」

(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/114-1b.html:2015年12月31日閲覧)

 

 

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