卒論紹介『都道府県間の人口移動における要因についての分析』
こんにちは。鈴木です。
今回は私が卒業論文で取り扱った「都道府県間の人口移動における要因」についての分析と結果を紹介します。
1.はじめに
現在、日本の都道府県において過半数が転出超過の現状にあります。2010年の国勢調査によると転入超過の県はわずか8都道府県であり、その他はおおよそ1000人以上の転出超過で人口流出が激しいといえます。高度経済成長期やオイルショック、バブル崩壊以降の不況といった社会、経済の変化の中でこれまでに行われてきた人口移動と、現代の人口移動の要因に違いはあるのか、といった疑問から、今回は都道府県間の人口移動の要因について分析を行いました。
2.使用したデータ
目的変数は各都道府県の転入超過数、受け入れ先都道府県(以下、基準地)の人口に対する転入超過数の割合、各基準地への転入者数、各基準地からの転出者数、基準地人口に対する転出者数の割合の5つを設定しました。
説明変数は人口、所得、雇用、住居、その他、ダミー変数の6つのカテゴリから24種類を設定した。人口密度、男女別人口割合、15歳未満人口割合、15歳以上65歳未満人口割合、65歳以上人口割合、単身者世帯割合、昼夜間人口割合、県民所得、一人あたり県民所得、有効求人倍率、人口10万人に対する病院数、新設住宅着工戸数、一次産業従事者割合、二次産業従事者割合、三次産業従事者割合、持ち家率、可住地面積比率、基準地の政令指定都市の有無、都道府県間の距離、さらに人口や経済の規模、都道府県間の距離を鑑みてダミー変数として、東京と一都三県(東京、千葉、埼玉、神奈川)が基準地ないしは転出した際の移動先(以下、比較地)であった場合と、沖縄が比較地であった場合に設定しました。なお、説明変数は経済や人口規模によって分析に影響が出ないように基準地人口に対する割合に統一しています。
また、分析方法として、本稿では都道府県間の人口移動の要因を探るため、上記の5つの目的変数に対し24の目的変数を設定し、重回帰分析を行いました。重回帰分析を行うにあたっては変数減少法を用いて変数選択を行いました。
3.結論と今後の課題
今回の研究で明らかとなったのは、以下の二点です。
(1)東京を中心とした一都三県地域の特殊性
(2)各都道府県における高齢者の割合が人口移動に影響を及ぼす。
分析を行った結果明らかになったこの二点について、具体的に考察を行います。
まず、人口密度が全てにマイナスに効いていることから人口密度が高いほど求心力は高いが、定着率も高く人口移動は起きづらいと考えられます。持ち家率も同様に全てにマイナスに効いているという点から、持ち家率が高い都道府県ほど人口移動は起きづらく転入出があまり増減しないといえるでしょう。その一方、政令指定都市ダミーや東京基準地ダミーが全てにプラスであるという点から、特に経済規模の突出した都府県に関しては転入も転出も活発であるということが考えられる。中でも東京、千葉、埼玉、神奈川といった一都三県は地方の政令指定都市と圧倒的に経済規模や通勤、通学で用いる交通インフラの整備状況といった面で突出しているため明らかであるといえます。これは一都三県基準地ダミーと一都三県比較地ダミーが転入超過数と転入超過数の割合においてマイナスであること、それ以外の目的変数においてはプラスに働いていることからも裏付けられます。
この一都三県の特殊性で言えば、県民所得が転出者割合を除いて全てマイナスに働いている点にも着目したいと考えられます。はじめに述べたように、かつての人口移動は所得や雇用を求めて発生していると考えられていました。現に、転入超過数とその割合において昼夜間人口割合がプラスに効いていることからも、就業者が多い基準地ほど転入超過が発生しやすいのではないかという見方もできます。しかしながら、今回有効求人倍率は一つも有意ではなく、さらに県民所得が高ければ転出入が起きづらい、あるいは基準地への定着率が高いという結果となりました。これは単なる雇用先、賃金を求めての人口移動ではなく、生活基盤、あるいは住環境といった要因が人口移動に大きな影響を及ぼしていると考えられるのではないでしょうか。また、都道府県間の距離が全てマイナスに効いていることから、かつてのような都心一極集中ではなく、近県の政令指定都市への移動、もしくは一都三県に在住しその中で移動が発生しているのではないかと考えられます。
次に、高齢者の割合が人口移動に影響を及ぼす点について述べます。
この論拠に関しては、人口10万人に対する病院数が全ての目的変数に対しマイナスに効いていた点、転出者数において可住地面積比率がプラスに働いていた点、そして転入出者数において一次産業従事者割合がマイナスに働いていた点にある。人口に対する病院が多いほど人口移動は起こりづらいといえます。さらに、可住地面積比率が高いほど転出者数が多いということは三次産業に比べて一次産業や二次産業の方が活性化しており、いわゆる土地あまりになっている可能性が高いです。また、転出入者数にマイナスに効いている一次産業従事者は高齢者が多いことからも、高齢者の割合が高い都道府県は人口移動が起こりづらく、転出者数が少ない代わりに求心力も弱いために転入者数も少ないということがわかます。高齢者ほど持ち家率や所得も高いため、前述した考察結果とも整合性がとれている。
図1は、今回用いた65歳以上人口割合について表したものです。47都道府県のうち、赤で記したおよそ半分の県は65歳人口割合が25%以上です。また、青で記した23%以上の道府県も合わせると、各地方の中心となる大都市圏か関東、関西の一部の県を除いてかなりの数を占めることになります。つまり、現代の都道府県間の人口移動の減少の原因として各都道府県の高齢者の人口割合が高くなっていることが挙げられます。労働人口は各地方の政令指定都市など中核都市、あるいは東京を中心とした一都三県などやその周辺に移動するのに対し、他の県では高齢化が進むに連れて出生率も下がり、人口の自然増加率も下がる。高齢化が進むことで転入者数はますます減少し、地域の過疎化が進行するということです。地域の衰退は高齢化と密に関係があり、地方活性は悪循環を断ち切り各都道府県が若返りを行わないと難しいという現状が明らかになりました。
図1 各都道府県の65歳以上人口割合
今回の研究において明らかになった今後の課題は以下の二点です。
(1)東京を中心とした一都三県の特殊性と、その他の地域の人口移動について
(2)高齢者割合が人口移動に負の影響を及ぼすことの解決策と地域活性化について
今回、人口密度が高い都道府県ほど定着率が高く、人口移動が起こりづらいという結果になったにも関わらず、東京や一都三県ダミーは非常に有意かつプラスに働くため活発な人口移動が起きているという正反対の結果となりました。これには地方都市と首都圏の所得や雇用の差だけではなく、交通インフラの整備による通勤、通学圏の拡大やベットタウンを備えた巨大な経済規模を持つ首都圏の特殊性を明らかにしたといえます。したがって、この一都三県内の人口移動についての要因分析とその他の地域の人口移動についての要因分析を分けて行った場合ではさらに異なる結果が見えてくるのではないかと考えられます。この点において、まだ検証の余地があるとして今後の課題であるといえます。
次に、高齢者の割合が高いほど人口移動が起きづらいという結果から高齢化問題と人口移動の事象には密接な関係があるという結果についてです。前述のとおり、各地域における人口の増加は高齢者の割合が高ければ高いほど難しいことが現状です。これまでの考察から、単なる雇用や所得だけでなく、住環境や生活形態という点が人口移動にとって重要なファクターであることは明らかです。これらをもとにして、この悪循環を断ち切り、地域活性化のための各都道府県の若返りに向けた解決策を考える必要があるのではないでしょうか。
参考文献
姫野和弘(一般財団法人 土地総合研究所)(2015)「都道府県間の人口移動について リサーチメモ(2015年2月27日)」(http://www.lij.jp/news/research_memo/20150227_2.pdf:2015年10月30日閲覧)
国土交通省(2002)「国土交通白書平成14年版」(http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h14/H14/html/E1021101.html:2015年10月30日閲覧)
国土交通省国土地理院「各都道府県庁間の距離」(http://www.gsi.go.jp/KOKUJYOHO/kenchokan.html:2015年10月30日閲覧)
卒論紹介『経済調査機関による実質GDP成長率予測の精度について』
「経済予測は当たらない」という説がある。2014年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた際、その時期のエコノミストによる経済予想は大きく外れる結果となり、世間を大いに賑わせた。
しかし、経済予測は政府の政策提言の基礎や企業運営における指針などに非常に重要な要素となっている。そのため、この研究では経済調査機関が発表する実質GDP成長率予測に焦点を当て、本当に予測は当たらないのかを調査するとともに、予測機関の予測の傾向を明らかにすることで、最新の経済予測の実態を探っていく。
記事にするにあたり全文を載せるわけにもいかないため、細かいところは省略し、要点のみを紹介していきます。ご了承ください。
【対象予測機関】
予測値については、日本経済研究センターが年初に発表する『日本経済研究センター会報』の「民間調査機関経済見通し」を参考にした。これは、年末に予測機関が発表した予測値を集めたもので、発表時点の次の年度の予測値が掲載されている。以下、1980年以降継続してデータが取れた17機関を対象とした。
<専門研究機関等>
・政府見通し
・日本経済研究センター
・日経NEEDS予測
・国民経済研究会
・関西社会経済研究所
<生命保険・証券系>
・朝日生命保険
・大和総研
・野村証券金融経済研究所
・新光総合研究所
<銀行系>
・大和銀総合研究所
*対象期間は1980年から2012年であるが、2003年以降予測値を発表しなくなった機関や、組織自体がなくなった機関もある。
【日本の経済予測精度】
まず経済予測とそのパフォーマンスについて振り返ってみる。過去の実質GDP成長率予測を振り返ってみると、大きく外れた年が多いことがわかる。予測機関17機関の予測値の最大値と最小値をとってみると、その間に実質値が入っていない場合も多い。どの予測機関も予測が的中しなかった場合である(図1)。また、誤差が大きかった年はどのような年であったか調べるため、実績値と予測機関の予測値平均との差を誤差とし、その絶対値が大きい順に並べた(表2)。
図1 予測機関のパフォーマンス(実質GDP成長率予測)
表2 実質GDP成長率予測誤差ワースト10
予測値の誤差の絶対値が最も大きかったのは2008年度で、予測機関平均の2.0%に対し、実質値はマイナス3.7%で、5.7%も予測が外れている。予測の最大値は野村証券金融経済研究所と大和総研の2.3%、最小値は住友信託銀行やみずほ総合研究所などで1.9%であり、比較的どの機関も似たような予測値を発表していた。
次に誤差の絶対値が大きかったのは、1987年度のバブル期である。87年度の予測は、プラザ合意の影響による急激な円高進行の中で行われた。そのため予測機関平均の2.7%に対し、実質値は6.1%で、3.4%も予測が外れている。予測の最大値は政府見通しの3.5%、最小値は三菱総合研究所の1.8%であった。
【各予測機関の予測精度】
次は対象とした17機関の予測精度について見ていく。予測を評価する方法はさまざまなものが、今回は誤差を評価する指標として、平均平方誤差の平方根を用いる。これは、誤差の二乗和を平均し、平方根をとったものである。この値が小さいほど予測精度が良く、値が大きいほど精度が悪いということになる。
表3 実質GDP予測の平均平方誤差による予測精度比較
【考察】
日本の経済予測の的中率はそれほど高いものではない。予測機関によってはたまたまある年では的中することもあるが、外すことがほとんどである。その中でも予測が大きく外れた時期の背景に、リーマンショックやバブル景気などが挙げられる。世界的な金融危機やバブルは予測に大きな影響を及ぼすようである。
しかし、このような経済危機に対して予測機関はいち早く気づくことはできないのだろうか。外国で起こった危機に対して日本は楽観的な態度を取り、その影響が伝わる速さや大きさを見誤ることが多いように感じる。内閣府が発表する景気基準日付を参考に予測が大きく外れた年度を見てみると、確かに景気の転換点において予測を大きく外した年度が当てはまることが多い。世界の経済状況を加味しつつ、景気の変動に敏感になることが予測を的中させるために重要なことであろう。
予測機関ごとのパフォーマンスを比べると、年代によっては大きく差が出るときはあるが、平均してならすとあまり大差はないように思える。また、予測の的中率が時系列的に上昇しているということはなさそうだ。
そもそも予測を当てようとしていないということも考えられる。予測値を発表することにより、景気をコントロールしようという思惑や努力目標として数値を少し上に予測しているということもあるだろう。紙面の都合上長くなってしまうため省略してしまったが、政府見通しに関して、そのような背景を持って強気な予測をする傾向があるような結果が得られた。
本稿では実質GDP成長率のみをピックアップして分析を行ったため、消費や設備投資、輸出入などGDPを構成する変数については考慮していない。予測項目別に分析を行うことにより、本稿とは違った結果が出ることはあるだろう。より詳細な結果出ることは間違いないので検証する必要があると思われる。
今回のように、経済予測について事後的な評価をすることは予測の精度を向上させるために必要なことである。しかし、単に実質GDP成長率が当たったかどうかで判断するのではなく、なぜはずれたのか、今後予測を的中させるにはどうすればいいかなど多角的な評価方法を考えるべきである。
経済予測は家計や企業、はたまた一国の道標となりうるものであるため、今後もこのような評価を続けていくことは重要である。
【参考文献・資料】
浅子和美・佐野尚史・長尾知幸(1989),「経済予測の評価」, 大蔵省財政金融研究所『フィナンシャル・レビュー』, 第13 号, pp10-33。
山澤成康・阿久津聡・倉品武文・杉山友規・高橋顕吾・西川琢也・村上直己(1998),「経済予測のパフォーマンスは満足できるものか」, JCER REVIEW, Vol.14。
浅子和美・山澤成康(2005), 「予測機関の予測形成様式」, 「経済研究」, Vol.56, No.3,July 2005, pp218-233。
山澤成康(2011),『新しい経済予測論』、日本評論社。
日本経済研究センター,『日本経済研究センター会報』, 1980-2008 内1,2月号。
JCER 日本経済研究センターホームページ(https://www.jcer.or.jp/index.html)
内閣府,「年次経済財政報告」,内閣府ホームページ(http://www.cao.go.jp/ )
卒論紹介『貿易統計と景気の関係性について』
この論文では「実質輸出額」や「実質輸入額」といった貿易統計と景気の関係について述べていく。代表性による「実質輸出額が減少しているときは不況」といったイメージが必ずしも正しいわけではないということを周知させ国民の不必要な不安を取り除くべく、貿易統計と景気が常に連動するわけではないことについて分析し明らかにしていきたい。
また、代表性とは行動経済学の言葉で、ものごとを判断するときに代表的な事例に影響されて結論をだすことである。
【使用したデータ】
実質輸出額、実質輸入額、実質貿易収支(日本銀行時系列データ)
全て1990年1月~2014年12月の月次データを使用している。
【拡大期・縮小期に分けての統計分析】
1990年3月~2012年10月までの月次データをそれぞれ拡大期、縮小期ごとにまとめ、CI、実質輸出額、実質輸入額の平均値、中央値、標準偏差を求めた。
拡大期・縮小期に分けた結果、拡大期ではCIも実質輸出額、実質輸入額も増加していて、縮小期ではCIも実質輸出額、実質輸入額も減少していることが分かった。この分析の結果、長い期間で見ると「輸出額が減少すると景気は悪い、もしくは悪くなる」という世間一般で考えられている認識はあながち間違いではないことが分かった。
【景気循環における拡大期、縮小期ごとの分析】
次にそれぞれの景気循環における拡大期、縮小期のCI,実質輸出額,実質輸出額の変化率の平均値、中央値、標準偏差を調べた。
1990/3~93/9、2012/4~12/10の2期は縮小期でありながら実質輸出額の変化率が1を超えていることが分かった。この結果から景気が縮小しているときに必ずしも輸出額が減る傾向であるわけではないことが分かった。
そこで景気動向指数であるCIの値が悪くなり実質輸出額が増加している時期、CIの値が良くなって実質輸出額が減少している時期を具体的に調べ、分析していく。
【輸出額の増減が景気と連動しなかった期間の分析】
図1
図1で赤く囲まれている期間が輸出額の増減が景気と連動しなかった期間である。
①プライム・ローン問題、輸出の増加(2007.7~2008.1)
期間中のCIの変化率の平均値は1未満、実質輸出額の平均値は1以上となっている。
この時期の輸出は緩やかに増加していた。地域別にみると、アジア向け輸出は一般機械、電気機器や化学製品が増加し全体として増加していた。アメリカ向け輸出は輸送用機器が増加している。EU向け輸出は一般機械、輸送用機器が増加し、全体として緩やかに増加 していた。
景気はアメリカのサブプライム・ローン問題の影響で悪化した。住宅価格のバブルは非合理的なバブルであったのであり、金融工学への過信もバブルの崩壊と同時に消失した。借り手の返済能力を超えたサブプライム・ローンに対しては、金利支払いや元本の返済に追われだした者は消費を削減せざるをえなくなった。自動車ローンなどの一般的な融資も縮小し、その結果、アメリカの実体経済は急速に冷え込むことになった。日本経済は「いざなぎ超え」と喧伝された戦後最長の好景気が2007年10月に天井を打ち、緩やかな景気後退期に入っていった。
②景気の良化、輸出の悪化 (2013.7~2013.10)
期間中のCIの変化率の平均値は1以上、実質輸出額の変化率の平均値は1未満である。
この時期の輸出は弱含んでいた。地域別にみると、アジア向けの輸出はおおむね横ばいであった。アメリカ及びEU向けの輸出は横ばいとなっていた。一方、その他地域向けの輸出は弱含んでいるとみられていた。
2013年7-9月期の実質GDP(国内総生産)の成長率は、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)がマイナスに寄与したものの、民間最終消費支出、民間住宅、民間在庫品増加、政府最終消費支出、公的固定資本形成がプラスに寄与したことなどから前期比で0.5%増となった(4四半期連続のプラス)。
以上からこの景気回復は輸出頼みの景気回復ではないことがわかる。景気を回復させるには輸出の増加が必要というのが世間のイメージだが、今回の景気回復は輸出が減少していたとしても景気回復が可能なことを示している。
【輸出依存度】
輸出が増加しても景気が悪化するケースや輸出が減少しても景気が回復するケースがあることが分かった。そこで世界で日本の輸出依存度はどれ程高いのか調べた。
表 世界の輸出依存度 国別ランキング (全208か国)【単位:%】
順位 |
国名 |
輸出依存度 |
1 |
香港 |
179.88 |
11 |
オランダ |
66.00 |
41 |
韓国 |
43.87 |
50 |
ドイツ |
38.70 |
110 |
中国 |
22.28 |
121 |
フランス |
20.41 |
137 |
イギリス |
16.48 |
144 |
日本 |
15.24 |
169 |
アメリカ |
9.32 |
グローバルノート - 国際統計・国別統計専門サイトhttp://goo.gl/c5LbrL(2016.1.10閲覧)
上の表から日本の輸出依存度は15.24%で世界208か国の中で144位と、アメリカを除く他の先進国よりも輸出依存度が低いということが分かった。つまり景気回復に輸出の増加が必須という世間のイメージと異なり、輸出の増加が昨今の日本の景気に与える影響は少なくなってきているのである。
【実質輸入額と景気】
図2
先ほどまでに昨今の日本において輸出額の増減は景気に影響を及ぼしにくいということを述べた。しかし、上の図2からは実質貿易収支の増減は景気に大きく影響を及ぼしているように考えることができる。
そこで新たに「最近の日本の景気の良し悪しは実質輸入額によって決まるようになっている」という仮説を立て検証する。
それぞれの期間の内閣府月次報告を参照すると、輸入額が増加する状況の期間、設備投資、個人消費が増加し景気が良くなった。また輸入額が減少する状況の期間、設備投資、個人投資ともに減少し景気が後退していることが分かった。
よって「最近の日本の景気の良し悪しは実質輸入額の動向によって決まるようになっている」という仮説は正しいと考える。
【結論】
この論文では4つの事実を明らかにすることができた。
1つ目は日本における輸出額が増加しているときは景気が良くなるという世間のイメージは統計的に見るとあながち間違ってないように見えるということ。
2つ目は、1つ目のイメージ通りにいかない輸出額が増加しても景気回復しない期間がある上に日本の輸出依存度は他の先進国と比べても低く、輸出額の動向が最近の日本の景気に大きな影響を与えているとは言えないということ。
3つ目は「貿易赤字や実質貿易収支の減少は景気後退に繋がる」という世間のイメージは全く正しくないこと。むしろ貿易赤字や実質貿易収支が減少しているときに景気回復をしていることが頻繁にあること。
4つ目は最近の日本の景気の良し悪しは実質輸入額の動向によって決まるようになってきているということ。
当初の目的であった「輸出額が減少しているときは景気が悪い」や「貿易赤字のときは景気が悪い」という世間のイメージを分析することで、これらのイメージは行動経済学における代表性によるものであり事実ではないということを示すことができた。この認識を広めることができれば国民が好景気なのにも関わらず不景気だと勘違いして消費を控え結果的に本当に不景気になるという自己成就予言を避けることができるだろう。
【参考文献】
浅子和美・篠原総一(2011)『入門・日本経済』有斐閣
山澤成康(2011),『新しい経済予測論』日本評論社
三橋規宏・内田茂男・池田吉紀(2009),『ゼミナール日本経済入門 改訂版』日本経済新聞出版社
内閣府 年次経済財政報告(2001) http://goo.gl/xIAPgn (2015年11月7日閲覧)
内閣府 年次経済財政報告(2008) http://goo.gl/wju83D(2016年1月10日閲覧)
内閣府 年次経済財政報告(2009) http://goo.gl/3GqA0o (2015年11月8日閲覧)
内閣府 年次経済財政報告(2011) http://goo.gl/DrbqpV (2015年12月閲覧)
内閣府 年次経済財政報告(2012) http://goo.gl/2gH8st (2015年12月閲覧)
内閣府 年次経済財政報告(2013) http://goo.gl/u82fXt(2016年1月10日閲覧)
内閣府 月次経済報告(平成4年11月)http://goo.gl/IhVWt7(2015年12月閲覧)
内閣府 月次経済報告(平成5年5月)http://goo.gl/5tQSD4(2015年12月閲覧)
内閣府 月次経済報告(平成8年4月)http://goo.gl/zYYMOA(2015年12月閲覧)
内閣府 月次経済報告(平成10年6月)http://goo.gl/4ZixPA(2016年1月10日閲覧)
内閣府 月次経済報告(平成12年12月)http://goo.gl/csls6s(2016年1月10日閲覧)
内閣府 月次経済報告(平成19年12月)http://goo.gl/PwcwU0(2016年1月10日閲覧)
内閣府 月次経済報告(平成23年5月)http://goo.gl/HD6Z13(2015年12月閲覧)
内閣府 月次経済報告(平成24年8月)http://goo.gl/N5tCKy(2016年1月10日閲覧)
内閣府 月次経済報告(平成25年10月)http://goo.gl/JM07tC(2016年1月10日閲覧)
グローバルノート -国際統計・国別統計専門サイトhttp://goo.gl/c5LbrL(2016.1.10閲覧)
日本銀行(1998)「1997年度の金融および経済の動向」https://goo.gl/uSyebw(2016年1月10日閲覧)
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卒論紹介『個人投資家のツイートデータを利用したセンチメント分析』
飯塚です。このエントリーでは私が卒業論文で執筆した「個人投資家のツイートデータを利用したセンチメント分析 ― 個人投資家の感情変化と日経平均株価日次データの関係に関する考察」を一部噛み砕いて紹介します。
——————————————————————
-
はじめに
世の中の人々の抱えている考えや感情の分析といったものは、これまで取得することが非常に困難だった。理由は
・大量のデータを取り扱える分析手法が発達していなかった点
・分析元となるデータを大量に取得することが困難であった点
の大きく二点が挙げられる。
前者の分析手法に関しては、近年大量のテキストデータを解析できるようになり、また、言葉そのものが持つ感情のポジティブ度合い、ネガティブ度合いを定量化することができるようにもなった。中でも、石島他(2015)、「日次データを用いた市場センチメント・インデックスの構築と株価説明力の分析」(http://sigfin.org/?plugin=attach&refer=SIG-FIN-011-06&openfile=SIG-FIN-011-06.pdf)では、日本経済新聞の記事に含まれるテキストデータをテキストマイニングし、市場センチメント・インデックス(記事テキストに含まれる感情や雰囲気)が、三日後の株価収益率を説明・予測しうることを発見した。
これらの成果を参考に、本論文では、過去研究では触れられていない個人投資家自身の発信するテキストデータを大量に取得し、それらをテキストマイニングして感情の起伏を探った。また、その起伏と日経平均株価の日次データとを比較し、関係性を考察した。
-
分析対象・分析手法
分析対象となるデータは下記である。
- データ収集元:Twitter (https://twitter.com/)
- 対象ユーザー:個人投資家らしきTwitterアカウントのうち「フォロワー数5000人以上」「目視で確実に個人投資を行っていると確認できるアカウント」
- 対象言語:日本語ツイートのみ
- 対象期間:日経平均株価日次データとの比較時=2015年8月4日〜2015年11月30日
曜日データとの比較時=2015年8月2日〜2015年11月30日
- リツイート:含む
- @ツイート:含む
- 取得ツイート数:41,600ツイート(1アカウントあたりの取得限界数3200ツイート×13アカウント)
続いて実際の分析であるが、
という順序で実施した。各プロセスで使用したソフトウェア、辞書などは下記である。
・Tweet取得:Twimemachine(http://www.twimemachine.com)
・テキストマイニング(分かち書き):Tiny Text Miner Windows版(http://mtmr.jp/ttm/)
・形態素解析エンジン:mecab-0.98 (http://mecab.googlecode.com/svn/trunk/mecab/doc/index.html)
・センチメント辞書:「単語感情極性対応表」 (http://www.lr.pi.titech.ac.jp/~takamura/pndic_ja.html)
-
データセット
データカテゴリ |
データ名 |
算出式 |
− |
||
− |
||
日経平均株価(高値) |
− |
|
日経平均株価(安値) |
− |
|
高値と安値の差 |
(高値) – (同日安値) |
|
投資家感情 |
投資家感情(絶対値) |
− |
投資家感情 |
投資家感情(相対値) |
(感情数値) − (全感情データの平均値) |
投資家感情 |
投資家感情(前日差) |
(翌日感情数値) – (前日感情数値) |
※サンプルツイート対象期間:2015/8/4〜2015/11/30
曜日ダミーデータ比較時のデータセット
データカテゴリ |
データ名 |
算出方法 |
投資家感情 |
投資家感情(絶対値) |
− |
投資家感情 |
投資家感情(相対値) |
− |
投資家感情 |
投資家感情(前日差) |
(翌日感情数値) – (前日感情数値) |
曜日 |
月曜日ダミー変数 |
− |
曜日 |
火曜日ダミー変数 |
− |
曜日 |
水曜日ダミー変数 |
− |
曜日 |
木曜日ダミー変数 |
− |
曜日 |
金曜日ダミー変数 |
− |
曜日 |
土曜日ダミー変数 |
− |
※サンプルツイート対象期間:2015/8/2〜2015/11/30
-
重回帰分析の結果概要
本論文においては、下記の四種類の関係を探った。
- 投資家感情(絶対値)に対する日経平均株価の値動きの影響
- 投資家感情(絶対値)に対する前日の日経平均株価の影響
- 投資家感情(前日差)に対する曜日ダミー変数の影響
- 翌日始値と前日終値の差額に対する個人投資家の感情の影響
- 投資家感情(絶対値)に対する日経平均株価の値動きの影響
10%有意水準において、株価の高値と安値の差は、個人投資家の感情へマイナスに働いていると言える。これは相場の変動に振り回され、不安や恐怖の感情を個人投資家たちが抱いているためであると考えられる。
2.投資家感情(絶対値)に対する前日の日経平均株価の影響
10%有意水準において、前日株価の終値は、翌日の個人投資家感情へプラスに働いている。これは前日の終値を個人投資家たちがチェックしており、それが上がり傾向であれば当然翌日の感情がポジティブに変わるためであると考えられる。
3.投資家感情(前日差)に対する曜日ダミー変数の影響
1%有意水準において、土曜日であることは個人投資家の感情の前日との差にプラスへ働いていると言える。仮説であるが、土曜日になると市場が閉じており、不安な感情を抱かなくて済むためであると考えることができる。
これまで日経平均株価が個人投資家たちの感情に与える影響を分析してきたが、逆に個人投資家たちの感情の総和が日経平均株価に影響を与える可能性についても検証した。
投資家の感情数値の前日差は、5%有意水準で、翌日始値と前日終値の差額へプラスに働いている。つまり、投資家の感情が前日から翌日にかけてプラスに推移すれば、翌日始値が前日終値より大きくなるということであり、その逆も然りである。これは個人投資家たちの感情の総和が日経平均株価へ影響を与えうることを示しているが、見せかけの回帰である可能性もあり、個人投資家の感情の動きが確実に先行して影響を与えていると断言するには材料が不足しているとも言える。
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以上です。この結論をより強固なものにするには、取得するツイートの対象アカウントをより広くし、ツイートのサンプルを増やすことや、ツイートの対象期間を広げるということが考えられます。これを本論文の課題として、論文の紹介を終わります。
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参考
- 日次データを用いた市場センチメント・インデックスの構築 と株価説明力の分析
石島博、數見拓朗、前田章
(http://sigfin.org/?plugin=attach&refer=SIG-FIN-011-06&openfile=SIG-FIN-011-06.pdf)
- Twimemachine (http://www.twimemachine.com/)
- TinyTextMiner (http://mtmr.jp/ttm/)
- Mecab (http://mecab.googlecode.com/svn/trunk/mecab/doc/index.html)
- 高村大也 「単語感情極性対応表」 (http://www.lr.pi.titech.ac.jp/~takamura/pndic_ja.html)
- 日経平均プロフィル 日経平均株価 (http://indexes.nikkei.co.jp/nkave/index/profile)
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卒論紹介『国内の大規模イベントと土地価格の関係についての研究』
国内の大規模イベントと土地価格の関係についての研究
田村賢史
本論文では、国内で行われる大規模なイベントで地価はどのように変動するのかについて検討した。対象は長野オリンピック、愛知万博、横浜華博、つくば万博、日韓W杯前後5年の地価情報である。
地価情報・使用するデータ
今回行う調査は、
内容 日本で行われる大規模なイベントで地価はどのように変動するのか。
対象 長野オリンピック、愛知・横浜・つくば万博、日韓W杯前後5年の
地価情報からビックイベントと地価の関係について調べる。
調査では公示価格を使用する。データは標準地・基準地検索システム、国土交通省地価公示・都道府県地価調査に載せてあるものを利用した。
調査方法
長野オリンピック、愛知万博、つくば科学万博、横浜華博、日韓W杯開催会場の5つを調査対象とする。
- 長野オリンピック ・・・平成3(1991)年開催決定、平成10(1998)年開催
- 愛知万博 ・・・平成9(1997)年開催決定、平成17(2005)年開催
- つくば科学万博 ・・・昭和56(1981)年開催決定、昭和60(1985)年開催
- 横浜華博 ・・・昭和59(1984)年開催決定、昭和64(1989)年開催
- 日韓W杯開催会場 ・・・平成8(1996)年開催決定、平成14(2002)年開催
対象都市は長野市とする。期間は、平成5~15年のデータを使用する。比較都市は、長野県松本市と新潟県長岡市を使用する。
対象都市は長久手市とする。期間は、平成12~22年のデータを使用する。比較都市は岐阜県多治見市と静岡県沼津市のデータを使用する。
- つくば科学万博
茨城県つくば市を対象都市とする。期間は、昭和55年~平成2年のデータを利用する。比較都市は茨城県土浦市と水戸市である。
- 横浜華博
神奈川県横浜市を対象都市とする。期間は、昭和59年~平成6年のデータを利用する。比較都市は神奈川県川崎市と埼玉県さいたま市である。
- 日韓W杯
日韓W杯は、平成14(2002)年に、日本と韓国それぞれ10か所、計20か所で試合が行われた。この中で観客動員数が多かった上位3つである埼玉スタジアム、横浜国際総合競技場、長居スタジアムがある都市(横浜市、さいたま市、大阪市東住吉区)をデータとして使用する。
集計の仕方は、上記①~⑤の各地点の合計したものに、全地点、住宅地、商業地、工業地ごとの平均とその上昇率(前年比)を出す。相乗平均を出すので正の数にする必要があるため、すべての上昇率にそれぞれ1を足す。
対象地と比較値の比較結果
長野市の地価の変動率は、オリンピックが開催される前3年、5年の平均ともに比較年よりも下落率が小幅であった。また全国平均と比べても下落率の落ちは少なかった。
平成3年は、全国的には、バブル崩壊の年であり、また、その数年後に阪神淡路大震災が発生したことから、オリンピックが開催される2年前までは二ケタの割合で地価が下落している。比較都市の松本市も比較的似たような変動率を示している。しかし、長岡市は、平成5年まで地価は上昇していることから、必ずしもすべての市町村が全国平均と同様の動きをしているとは限らない。
平成12年は、全国的には、バブル崩壊による平成不況の10年が一段落したが、地価の下落には歯止めがかかっていなかった。開催地である長久手市も、開催前3,5年前は地価が下落している。比較地域の多治見市と沼津市の下落幅は全国平均、長久手市と比べても大きくなっている。開催後は長久手市の地価は上昇しているが、全国平均と比べても大きな違いは見られない。
- つくば科学万博
対象期間の後半は昭和61年から平成3年にかけてバブル景気であったため、全国的に地価価格は大幅に上昇している。その中でも昭和62年の地価上昇率は58%に達するなど、土地の高騰が際立っている。住宅地、商業地、工業地を比較すると、住宅地の変動率が大きくなっている
つくば市を見ると、万博開催前の3年間の地価の上昇率が全国平均、比較都市よりも高く、20%を超えている。しかし、開催2年後の昭和62年には、比較地域を含めた対象期間の中で唯一地価が下落している。この年は、先に触れたようにバブル最盛期であるため、比較都市も地価は上昇している。よって、万博開催前に地価が上昇した分、その反動で地価下落につながったと考えることもできる。一方で、万博以外に目を向けると、昭和62年11月30日に筑波郡矢田部村、大穂町、豊里町、新治群桜村の3町1村が新設合併して、当時の筑波町から人口11万人を超えるつくば市が誕生している。地価が全国平均以上に上昇した理由としては後者も考えることができる。
- 横浜華博
開催前3、5年は全地点、川崎、さいたまの上昇率はほぼ同じである。開催後3,5年も横浜と全国平均ほぼ変わらず、上昇から下落に反転するタイミングもさほど変わりはない。住宅地、商業地、工業地も同様の動きである。全国平均の61~62年にかけて最も上昇率が高いのは先に触れたように、バブル景気の影響とみられるが、各都市を見ると、最も上昇幅が大きいのが3地点とも昭和63年で全国平均と比べて1年遅くなっており、全国平均よりも大幅に上昇している。
- 日韓W杯
横浜市、さいたま市、東住吉区ともに全国平均と比較しても大きな違いはみられなかった。開催年のみ全国平均が若干上昇しているが、対象地域は同程度の割合で下落している。住宅地、商業地、工業地ともに全地点で地価は下落していて、W杯開催前、開催後で目立った違いはみられなかった。
対象地全体の開催前5年、前3年、開催年、開催後3年、5年の上昇率の変動の平均
全体平均(対象地) |
全地点 |
住宅地 |
商業地 |
工業地 |
前5年 |
0.0212 |
0.0318 |
−0.0073 |
0.0267 |
前3年 |
0.0418 |
0.0449 |
0.0212 |
0.0275 |
開催年 |
−0.0339 |
−0.0297 |
−0.0459 |
−0.0404 |
後3年 |
−0.0420 |
−0.1186 |
−0.0486 |
−0.0744 |
後5年 |
−0.0229 |
−0.0629 |
−0.0460 |
−0.0727 |
比較地全体の開催前5年、前3年、開催年、開催後3年、5年の上昇率の変動の平均
全体平均(比較値) |
全地点 |
住宅地 |
商業地 |
工業地 |
前5年 |
0.0489 |
0.0676 |
0.0379 |
0.0564 |
前3年 |
0.0774 |
0.0910 |
0.0695 |
0.0360 |
開催年 |
−0.0235 |
−0.0246 |
−0.0178 |
−0.0069 |
後3年 |
−0.0089 |
−0.0050 |
−0.0122 |
0.0340 |
後5年 |
−0.0202 |
−0.0109 |
−0.0293 |
0.0014 |
対象地全体と比較値全体の比較
最後に対象地全体と比較値全体の平均について見ていく。全地点を比較すると、イベント開催前3、5年ともに比較値地価の方が上昇率は大きかった。イベント開催後も3年は比較値の方が下落率は低くなっていた。住宅地、商業地、工業地についても同様の結果となった。工業地は比較値地価が上昇しているのに対し、イベント開催地は下落が続いたままであった。
まとめ・考察
5つのケースについてデータを比較してきたが、対象地域と比較地域との間に大きな違いがみられると思われるケースはなかった。長野オリンピックのみ若干の上昇率の違いがみられたが、比較地域と比較すると際立って上昇しているといえるものではなかった。また、①~⑤のデータ全体を比較しても、むしろ対象地域のほうが上昇率は大きく、下落率は小さいという結果であった。このことから国内の大規模なイベントと地価の相違は見られないといえる。個別のデータでは触れなかったが、地価の上昇率に変動を与える要因として、一つに市町村合併があげられる。市町村合併もしくは隣接する地域を吸収している地域はその次の年度に地価が大きく上昇していることがいくつかの地域で見られた。そこに住む人々の生活に直接の影響を与えるような事象が、土地価格に大きく影響を与えるのではないかと考えられる。