駿河台経済新聞

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後期に扱った本・論文の紹介

新年あけましておめでとうございます!
2020年も飯田ゼミナールをよろしくお願いします。
いよいよオリンピックイヤーに突入で、とてもワクワクしています!今後、夏に向けての盛り上がりが楽しみです!

さて今年1発目のブログでは、後期のゼミで扱った統計系の本3冊と論文3本をご紹介します!

まずは本の紹介です。

1.『 実証分析のための計量経済学』 山本 勲 著
計量経済学を用いて分析を行うにあたって、必要な知識や手法を学べる本。理解に時間がかかったり手法が難解であるような単元も、実際の論文が実例として記載されており、卒論にこれから取り組んでいくうえで非常に参考になりました。

実証分析のための計量経済学

実証分析のための計量経済学

2.『人工知能と経済』 山本 勲 著
現在「人工知能(AI)」という言葉が、新聞や報道番組で毎日のように聞かれるようになりました。この本では、経済学の多様なフィールド(マクロ経済、労働、教育、金融、交通、生産性)が取り上げられ、AIが今後普及するにつれどのような影響があるのか、過去から最新の技術進歩エピソードや研究動向を整理し、様々な知見をもとに、今後の技術進歩の社会経済に与える影響や留意点が述べられています。今まで何となくの理解であった「人工知能」をより深く学ぶことができました!

人工知能と経済

人工知能と経済

3.『実証分析入門 データから「因果関係」を読み解く作法』森田 果 著
実証分析を基礎から発展的なところまで学ぶことができる1冊。数式だらけではなくユニークな具体例を用いての解説など非常に読みやすく、実証分析の導入の学習に役立ちました。卒論の際にも参考にしたいと思います。

実証分析入門  データから「因果関係」を読み解く作法

実証分析入門 データから「因果関係」を読み解く作法

次に論文の紹介です。

1.『パネル調査から見る働き方、生活時間、世代間支援』
—「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査(JLPS)2017」の結果から—
石田浩 藤原翔 白川俊之 石田賢示
東京大学社会科学研究所
https://csrda.iss.u-tokyo.ac.jp/panel/dp/PanelDP_105.pdf

卒論を書く前に、実際の経済学分野の論文を授業内で扱いました。この論文では、JLPSデータを用いて働き方やライフスタイルに関する調査を行っていました。長時間労働メンタルヘルスに影響を与えるか、正社員としての就業希望を実現した人とそうでない人の違い等、勤労についての分析を男女別に行っており、手法だけでなくその内容も非常に参考になりました。

2『高校新卒者の進学行動と最低賃金』 北條 雅一
https://www.jcer.or.jp/jcer_download_log.php?post_id=53805&file_post_id=53796

海外では、最低賃金が上昇すれば、進学率が下がるという負の影響が多数報告されています。この論文では、日本の地域別最低賃金の上昇が、高校新卒者の進学行動にどのような影響を与えるのか、という分析が行われていました。個別データではなく、都道府県データを用いている点が前述の論文との違いです。普段私たちは「進学」と聞くと「大学に行くか、行かないか」という選択を思い浮かべますが、この論文では、短大・専門学校・大学進学・就職という複数の観点で考察されており、その結果も面白いものでした。

3.『居住地域における所得状況が生活満足度に与える影響』 水落 正明
https://www.jcer.or.jp/jcer_download_log.php?post_id=53818&file_post_id=53814

この論文では、居住地域における所得状況が生活満足度に与える影響について分析が行われていました。絶対的な所得額だけでなく、居住地域の基準所得も分析に加味していて、非常に現実的な分析が行われていました。また、データには三重県の五市のデータが用いられていました。したがって、この論文から小地域における所得状況とそれが生活満足度に与える影響について知ることができます。生活満足度を扱うテーマは卒論でもよく取り上げられるため、そのお手本として参考になりました。

4.『何歳で結婚すると離婚しにくいのか』 佐藤 一磨
https://www.pdrc.keio.ac.jp/uploads/DP2017-011_jp.pdf

現在日本では晩婚化が進んでおり、初期年齢の変化と少子化との関係について様々な分析がなされています。この論文は、初期年齢と離婚にどのような関係があるのかを分析した珍しい研究となっています。分析の結果、ある歳を境にして離婚確率が変わることが分かりました。ほかにも学歴別の初婚年齢と離婚関係も分析されていて、大変興味深いものでした。

5.『経済のサービス化と雇用創出の地域間格差 産業連関表に基づく分析』阿部 宏司 パク・サンチュル 永禮 拓也
https://www.jstage.jst.go.jp/article/srs/35/1/35_1_17/_pdf/-char/ja

東京圏では第三次産業への移行が著しく、現在8割近くがサービス業と言われています。この論文では、サービス化の中で雇用創出に見られる地域間格差の動向を、夏合宿でも扱った産業連関表を用いて分析している論文です。分析結果から成長格差が顕著な部門や成長寄与度の東京圏と地方圏との部門の違いが見え、格差是正の課題解決の手法の1つが明らかになりました。