駿河台経済新聞

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卒論紹介:有名企業への就職率が高い大学にはどのような特徴があるのか

今回の記事を担当した亀田です。

 

この記事では僕の卒業論文『有名企業への就職率に影響を与える大学の特徴』を簡単に紹介したいと思います。

 

今回は重回帰分析を使って大学のどんな特色が有名企業への就職率を高めているのか、を調べました。

 分析に用いた変数は次の通りです。

・説明変数

  1. 偏差値
  2. 総学生数
  3. 定員充足率
  4. 教員一人あたりの学生数
  5. 職員一人あたりの学生数
  6. 標準修業年限を超えて在籍している学生の割合(留年者割合)
  7. 大学院進学率
  8. 女子学生の割合
  9. 国際系の学部に所属する学生の割合
  10. 理系学生の割合
  11. 推薦・AO方式の入学者割合
  12. 現役学生割合
  13. 公務員・教員になった学生の割合
  14. 創立年度
  15. 国公立ダミー
  16. 首都圏ダミー

 

・目的変数

『就職に強い大学2015』(読売新聞社2014)より

y1;掲載企業100社への各大学の就職率

y2;掲載企業100社から金融系を除いた企業への各大学の就職率

週刊エコノミスト』(毎日新聞社)2014年8月5日号

z1;掲載企業100社への各大学の就職率

z2;掲載企業100社から金融系を除いた企業への各大学の就職率

 

 いずれの就職率も2014年卒業者数を分母にして算出されたものです。

 

 金融系を除いた企業への就職率も目的変数として設定した理由を簡単に述べると、金融系の企業は他業界に比べて採用人数が圧倒的に多いので、色々な大学から幅広く採用している。そのため就職にあまり強くない大学でも金融系の企業にはそれなりに採用される。

 要するに、有名企業への就職に本当に強いかどうかは、金融業界への就職者数を除いた数がより重要だと言えるのです。

 詳しくは海老原嗣生(2012)『偏差値・知名度ではわからない就職に強い大学・学部』(朝日新書)を読んでみてください。

偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)

偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)

 

 

 

  • 分析の結果

 今回は、4パターンの目的変数を重回帰分析した結果のうち2つ以上の目的変数に対して効いている説明変数の紹介と考察をします。

 

  • 4つの目的変数全てに効いている説明変数
  1. 偏差値(プラスの影響)と⑩理系学生(マイナスの影響)の割合
  1. 偏差値が有名企業への就職率に影響するのは当然なので省略します。

⑩理系学生の割合が全目的変数にマイナスになっている要因としては、今回参考にした2誌掲載の100社が金融や商社といった文系学生が営業職志望として選考を受ける企業が多かったためと考えラレマす。また理系学生が多い大学はその分大学院へ進学する割合が多いと考えられるので、今回の学部卒での有名企業への就職率にはマイナスになったのかもしれません。

 

  • 4つの目的変数のうち3つに効いている説明変数

④教員一人あたり学生数(マイナス)⑮国公立ダミー(マイナス)

 ④教員一人当たり学生数が多いほど目的変数に対してマイナスなので、どれだけ教員の目が学生一人一人に向いているのかが有名企業への就職率には影響するということが分かった。また、⑮国公立ダミーがマイナス影響になっている理由としては、国公立大学独立行政法人化されるまで学内に就職課というものがなかったためOB・OGが入社した企業などの情報量で私立大学に圧倒的な差をつけられているのが原因かもしれない。大学受験の際に大学の就職課の充実度まで調べる受験生はそんなにいないと思うので、同程度の偏差値の大学で迷ったときは就職課の充実度を調べてみるのもいいかもしれない。

 

  • 4つの目的変数のうち2つに効いている説明変数

⑥留年者割合(プラス)⑬公務員・教員になった学生の割合(マイナス)⑯首都圏ダミー(プラス)

 ⑥留年者割合がプラスに効いているのは目的変数y2とz2に対してであり金融系の企業を除いた目的変数対しては留年者割合が高い方がプラスに効いている。この理由は、採用人数が多いため幅広い大学から採用する金融とは違い、厳選採用する企業では大学での教育までみるため留年者割合が高い(=単位取得が難しいためしっかり勉強している学生が多い)大学に有利なのかもしれない。

 ⑬公務員・教員になった学生の割合が多いほど有名企業への就職率が低くなるのは、教員養成系の学部があったり、公務員講座に力を入れている大学では当然民間企業への就職を考える学生が少なくなるためと考えられる。

  1. 首都圏ダミーがプラスに効いている理由は、有名企業の本社が集中している東京に、説明会や選考などに何度も行くことがそこまで負担にならないことが影響しているのかもしれない。やっぱり企業との接触機会は多い方が有利なのでしょう。

 

 こんな感じで変数の考察を終わりたいです。








以下今回対象にした100社と参考文献です。

『就職に強い大学2015』(読売新聞社2014)掲載の100社

就職に強い大学 2015 (YOMIURI SPECIAL 85)

就職に強い大学 2015 (YOMIURI SPECIAL 85)

 

 

日本郵政 みずほ 三井住友銀行 三井住友信託銀行 三菱東京UFJ銀行   

三菱UFJ信託銀行 横浜銀行 りそな アフラック 損保ジャパン・日本興亜損保 第一生命 東京海上日動火災保険 日本生命保険 三井住友海上火災保険    SMBC日興證券 大和証券G 野村證券 三菱UFJモルガンスタンレー証券

ADK JR東日本企画 電通 博報堂    エイベックスグループホールディングス

ソニーミュージック 東宝    ポニーキャニオン KADOKAWA 講談社

集英社 小学館 朝日新聞 読売新聞    大日本印刷 凸版印刷 NTTデータ   

NTTドコモ 伊藤忠商事 伊藤忠丸紅鉄鋼 大塚商会 住友商事   

双日 丸紅 三井物産 三菱商事 花王 資生堂    ANA

成田エアポートサービス    小田急電鉄 JALスカイ 西武グループ 全日本空輸JR東海    東京メトロ JR東日本 JAL 日本郵船 オリエンタルランド 高島屋Plan do see ミリアルリゾートホテルズ J;COM テレビ朝日

日本テレビ放送網 NHK フジテレビジョン    HIS JTBグループ 東芝 トヨタ

日立製作所 本田技研工業    三菱重工 三菱電機 ニトリ 三越伊勢丹グループ

アサヒ飲料 アサヒビール    味の素 カゴメ キューピー キリン   

サントリーホールディングス 明治グループ    森永製菓 森永乳業

ロッテグループ    バンダイ バンダイナムコ    住友林業 積水ハウス

セキスイハイムグループ    大和ハウス工業    三菱地所 JICA   

大和総研グループ 野村総合研究所    旭化成グループ    コクヨ    東レ

富士フィルム

 

週刊エコノミスト』(毎日新聞社)2014年8月5日号掲載の100社

 

大林組    鹿島 積水ハウス    大成建設 大和ハウス工業    アサヒビール 味の素

キリン    サントリーHD    JT 日清食品 帝人 東洋紡    東レ

王子グループ 花王 資生堂 富士フィルム ライオン 第一三共    武田薬品工業

JX日鉱日石エネルギー JFEグループ 新日鉄住金 旭硝子 日本ガイシ

ブリヂストン NEC 京セラ シャープ ソニー 東芝 日本IBM    パナソニック

日立製作所 富士通 三菱電機 クボタ ダイキン工業    川崎重工業

三菱重工業 トヨタ自動車    日産自動車 ホンダ 三菱自動車工業

キヤノン 大日本印刷 任天堂 伊藤忠商事 住友商事    三井物産

三菱商事 高島屋グループ    三越伊勢丹 セブン&アイHD   

ファーストリテイリング    ローソン すかいらーく 日本マクドナルド   

みずほFG 三井住友銀行    三井住友信託銀行 三菱東京UFJ銀行   

りそなグループ    SMBC日興証券    大和証券グループ 野村證券

損保ジャパン/日本興亜損害保険 東京海上日動火災保険 第一生命保険

日本生命保険 オリックスグループ    三井不動産 JR東海 JR西日本 JR東日本商船三井 西濃運輸 日本郵船 日本通運 ヤマト運輸    ANA日本航空

NTTドコモ NTT西日本グループ    NTT東日本 KDDI ソフトバンクグループ講談社    ベネッセコーポレーション リクルートグループ NHK

フジテレビジョン 電通 博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ

関西電力 大阪ガス 東京ガス JTBグループ    楽天                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           

参考文献

  1. 海老原嗣生(2012)『就職に強い大学・学部』朝日新書
  2. 刈谷剛彦(編集)・本田由紀(編集)(2010)『大卒就職の社会学―データからみる変化』東京大学出版会
  3. 『大学の実力2015』(読売新聞教育部2014)
  4. 『大学の実力2011』(読売新聞教育取材班2010)
  5. 『就職に強い大学2015』(読売新聞社2014)
  6. 2014年8月5日号『週刊エコノミスト』(毎日新聞社)
  7. 各大学のHP

 

大卒就職の社会学―データからみる変化

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大学の実力 2015

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