駿河台経済新聞

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卒論紹介『人口密度と出生率の相関分析』

今回本研究では、「人口密度と出生率の相関分析」を扱います。

昨今の少子高齢化の直接的原因である合計特殊出生率の低下をテーマに据えました。

都道府県ごとの人口密度と合計特殊出生率の表を見ていると、人口密度が低い北海道と人口密度が高い首都圏の出生率が低いことがわかります。どこが高いかを見てみると九州地方、沖縄県が高い出生率をマークしていることもわかります。

これはある数値の人口密度において出生率が最大化され、下に凸の放物線を描くのではないかという仮説が浮かんできます。

 

本研究ではこの仮説をもとに2000年,2005年,2010年における都道府県データをもとに回帰分析を施しました。

被説明変数を合計特殊出生率、説明変数に人口密度(単純な人口密度、可住地人口密度、DID人口密度)と人口密度の2乗を用いて放物線を表現しました。またコントロール変数として県内男女比、一人当たり県民所得、DID集中度、県庁所在地の緯度、年平均気温、可住地面積比率を用いました。ここで県内男女比は女性の人数÷男性の人数、つまり男性一人に対する女性の人数を表し、DID集中度はDID人口÷人口、人口に対してどのくらいがDIDにいるか。をあらわしたものです。

 

分析方法としては、人口密度系(人口密度、可住地人口密度、DID人口密度)とその2乗から1種類、コントロール変数をすべていれた状態で回帰分析をし、そこからp値が高いものから取り除いていく方法を取りました。

 

以下には単純人口密度、可住地人口密度、DID人口密度からひとつずつ回帰式を掲載します。

 

単純な人口密度(人口/面積)から得られた回帰式

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可住地人口密度(人口/可住地面積)から得られた回帰式

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DID人口密度(DID人口/DID面積)から得られた回帰式

f:id:SurugaD:20160222205127p:plain

これらの回帰式からわかることをまとめます。

 

 

○人口密度がマイナスにきいている。

→人口密度が高くなるほど出生率は下がる傾向にある。

 高すぎることが基本的にマイナスに影響を及ぼしている。東京、大阪、神奈川の影響がより強く出ている

 

○人口密度の2乗がプラスにきいている。

→上を向いた放物線である

 人口密度が高ければ高いほどプラスに、低ければ低いほどプラスにきいていることになる。

 

○男女比がマイナスにきいている

→男性に対する女性の人数が多いほどマイナスに影響を与えるので裏を返すと男性に対する女性の人数が少ないほどプラスに影響を与えることがわかる。

 

○県庁所在地の緯度がマイナスにきいている。

→緯度が高ければ高いほど、北にあればあるほどマイナスに影響を与えている。

 つまり南にあればあるほどプラスに影響を与えている。

 

○一人当たり県民所得がマイナスにきいている。

→一人あたり県民所得が多ければ多いほどマイナスに影響を与えている。

 つまり県民所得が引くければ低いほどプラスに影響を与えている。

 

○人口集中度がマイナスにきいている。

→DID人口/人口が大きいほどマイナスにきくのでDIDに人口が集中しているほど出生率が低い。つまり集中しないほうがいい。

 

 

 

以上から見ると以下の仮説を立てることが可能であります。

・農村的出生率の高まり

一人当たり県民所得がマイナスにきき、人口集積度(DID人口/人口)がマイナスにきき、人口密度、可住地人口密度、DID人口密度がマイナスにきき、県内男女比(女性人口/男性人口)がマイナスにきくことから、県民所得が低く、人口が集積していなく、男性の労働力が主体で、人口密度が低い農村的社会での出生率が高いことが観察されます。

これは子供に対して、農業の後継、労働力としての期待があるのではないかと仮説が立てられます。

 

 

地球温暖化の影響で出生率が高まる可能性

→県庁所在地の緯度がきき、年平均気温はきいていることから、地球温暖化による気温上昇は出生率にプラスの影響を及ぼす可能性があることが考えられます。

 

 

・男女比は女性が男性に対して少ない方が出生率が高まる。

→どの回帰式にも変数として残っている、県内男女比、年齢別男女比はそれぞれマイナスにきいています。この変数はどれも女性の人口を男性の人口で割ったものであるので、男性一人に対する女性の人数という変数になっている。これがマイナスにきいているということは男性一人に対して女性が増えると出生率が減るということであり、逆に女性の人数が男性の人数に対して少なくなることは出生率にプラスの影響を与える可能性があります。

 

 

・人口密度をより高い状態にするか、より低い状態にすることが出生率を高めることにつながる

→東京、大阪、神奈川等人口密度が高い状態でしかも出生率が低いという点からこのあたりのプロットが放物線の頂点に近いところ、つまり底である可能性があります。そこからより人口密度を高めることは出生率を高めることにつながるのではないかと考えられます。また現在人口密度が低く、しかも出生率が低い地域はより人口密度が低くなることが出生率を高めることにつながると考えられます。つまり、人口の集積は最初、出生率に負の影響を与えるが、だんだんとその影響は薄まり、プラスにきく仮説を立てられます。以上より、人口の集積は出生率を高めることにつながるという仮説がたてられます。

 

・集積が出生率を低くする可能性がある。

→東京、大阪、神奈川等人口密度が高い状態がいまだ放物線の頂点、つまりそこではない場合、集積が起こることはより出生率を低くする結果となる可能性も考えられます。

 

 

以上、本論文の報告を終了します。

拝読ありがとうございます。

 

 

 

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